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状態異常

 (『勇者錬成計画』と『人魔共存計画』か。)


ラックは焚火の近くで胡坐あぐらをかいている。



 食事を終えると、辺りはすっかり真っ暗になっていた。


馬車にはテューネとノーラが寝ている。


バーナードは疲れているのか早々に寝袋に包まって寝た。



 ラックとエリックは交代で番をすることにした。


エリックは荷台の隅で横になって毛布にくるまっている。



 (天界、精霊界、竜界、魔界が


人間界に干渉しあっているというが


天界がなぜ、外界の干渉を許してんだ。


ま、ある程度、想像はつくが。


天界にはもう外界と戦う戦力がないんだろう。


管理神がいなくなり、


天使たちは人間界の維持で手一杯って


クラウスが言ってたしな。


外界と戦争するよりも


外界と手を組むほか手立てがないのかな。


天界が俺の思想に共感したっていうのは


わらをもすがらざるおえなかったってことか。


外界の戦闘技術が人間に提供され始めている。


精霊界の聖獣と剣技、


魔界の魔石と魔法、


それに冒険者の実戦経験の為と


魔石提供のための迷宮ダンジョン


天界も法術、冒険者には


神の加護である『スキル』を与えてるようだ。


竜界も何かしらの形で人間界に


干渉している可能性はあるな。


天界は人間自身が人間界を自己防衛できる形に


していきたいのかもしれない。


魔界の思惑としては人間に力がつけば


人間同士で争いが起き続けると見越して


人間の欲につけこんだ植民地支配を


進めるなんて計画を『黒』が考えそうだ。


天界は管理神が帰ってくるまでの


時間稼ぎをしたいのかもしれない。


今のところは、


人間を滅ぼす外界勢力はいないようだし


俺は見える範囲で情勢を様子観察しながら


行動の意思決定していくほかないか。)


ラックは主体的に動く事を避けて


行き当たりばったりで


対処する選択をすることにした。






 次の日の朝。


ラックとエリックは朝食を準備していた。


昨日の残りのポトフと


パンとチーズとサラダという昨晩と


ほぼ同じ献立だった。



 バーナードが起きないので


バーナードの体をラックは揺すった。


「朝だよ。バーニー、起きて。」



 バーナードは呼吸しているが目を開けない。



 エリックも心配してラックに歩み寄った。


「昨日は早くに横になったのに


全然、起きないですね。疲労でしょうか? 」



 ラックはバーナードの肌に


黒子ほくろくらいの斑点が無数にある事に気付いた。


「これは・・・呪いだな。」



 エリックは驚いた表情をした。


「昨日の戦闘で呪いを受けたのでしょうか。」



 「どうなんだろう。


それはわからないけれど


俺には呪いを浄化するスキルはない。」


ラックは困った表情を浮かべた。



 駆け寄る足音が聞こえた。


足音の主はノーラだった。


「おはようございます!


ラックさん、エリックさん、すみません。


テューネさんが苦しそうなんです! 


回復法術を施しても改善がみられません。


わたくし、どうすればよいのか。」


ノーラはひどく動揺していた。



 ラックは口を開いた。


「テューネさんが!?


ノーラさん、バーニーも


呪いにやられたみたいで起きないんだ。


浄化の法術は使えないか? 」



 「ごめんなさい。


呪いの浄化は


高位の法術スキルを持たないと行えないんです。


わたくしにはまだ使えません。ごめんなさい。」


ノーラは泣き出してしまった。



 かがんでいたラックは立ち上がった。


「テューネさんも呪いかな。


俺はテューネさんの様子を見てみるよ。」



 「おねがいします! 」


ラックにノーラは頭を下げた。



 ラックは馬車に乗り込んだ。


「テューネさん、大丈夫? 」



 「う~ん・・・あああ・・」


テューネは意識が朦朧としているようだった。



 ラックは肌を見たが斑点は見当たらない。



 「単なる魔力酔いですよ。」



 ラックの耳に男の声が聞こえた。



 声の主は立てかけてある人面剣ソードマンだった。


「陛下、このお嬢さんは


私に名前をつけてしまいました。」



 ラックは自分の額に手を当てた。


「お前、名前を受け入れて


契約を結んじまったのか。


お前とテューネさんは


強力な魔力パスが繋がって


お前の魔力が大量にテューネさんに


流れたんだろうな。


お前なぁ。


俺という所有者がいるのに


なんで契約を結んじまうんだよ。」



 人面剣は難しい顔をした。


「陛下には申し訳ありませんでしたが


もしも、契約を結ばなかったら


このお嬢さんが求める力に


私は応えられませんでした。


陛下からくれぐれもと


お嬢さんの事を頼まれていたので


私は苦渋の決断をしたのです。」



 ラックはため息をついた。


「なるほどなぁ。


テューネさんの獅子奮迅の活躍は


お前との契約の力だったのか。


テューネさんは俺の予想以上に


無茶をしたんだろうな。


(バーニーも呪いを受けるくらいの


ダメージを与えられたみたいだ。


食屍鬼グールはA級パーティーを


壊滅させるくらいの戦力って


話は事前に俺も聞いていたのに。)


敵戦力の目算を俺は誤ったって事か。


すまん。お前、ダスティンって名前だっけ。


ダスティンはもしかしたら


クエストの一番の功労者かもな。


ありがとうな。礼を言うよ。」



 「いえ、私は陛下の命令に従ったまでです。


お嬢ちゃんとは、どうも馬が合いまして、


お嬢ちゃんには死んでほしくはなかった。


魔力酔いは2~3日もすれば回復するかと。」


ラックに人面剣はそう言った。



 「そっか。命に別状ないならよかった。


魔力酔いは状態異常だからな。


ただの回復ヒールでは治せない。


ノーラさんに状態回復法術を頼むとしようか。」


馬車を降りてノーラにラックは駆け寄った。



 ノーラに症状を説明して


状態回復法術を施すように


ラックは頼むと、ノーラの表情が明るくなり


ノーラは駆け足で馬車に向かった。



 屈んで、バーナードを心配そうに


見つめるエリックの肩にラックは手を置いた。


「この程度の呪いなら帝都で高位神官に浄化を


依頼するまではバーニーの体力には


ノーラさんに回復ヒールをかけてもらえば


十分に余裕があるだろうが


それまで苦しませるのは俺は心苦しい。」



 ラックをエリックは見上げる。


「ラックさん、


何か浄化できる方法はあるんですか? 」



 ラックは頷いた。


「ある。聖水を使えばいいんだ。」



 エリックは目を見開いた。


「聖水って! 聖水なんて希少で高価なものを


ギルドから物資で支給されていたんですか? 」



 ラックは首を横に振った。


「いや、聖水は支給されていない。」



 エリックは首をかしげた。


「では、聖水はどこから調達するんですか? 」



 人差し指でエリックを指さした。


「エリックから抽出するわ。」



 「え~!?


オレっちの何から抽出できるっていうんすか?! 」


ラックに対して少し怯えた目をエリックは向けた。



 「いやいや、エリックの体から抽出しないよ。


マナで最大サイズの疑似聖剣を作ってくれる? 」



 「疑似聖剣ですか。いいですけれど。」


エリックはに落ちない表情で立ち上がると


両手にマナの力を集中させる。


エリックの両手から


マナで出来た不可視の大剣が錬成された。



 不可視の大剣が見えているかの如くラックは


エリックの大剣の剣心を右手で掴んで取り上げた。



 エリックは何が起きたのか理解するのに


少しの間が必要だった。


エリックの作った不可視の聖なる大剣を


ラックは掴んで奪ってしまったのだ。


「え? マナで作った剣って


物理的なものではないですよ。


なんでラックさんは掴んで持ってるんすか? 」



 ラックは嫌そうな顔をした。


「今、そんなことを説明する必要あるの? 」



 エリックは肩を落とした。


「今度でいいので教えてくださいね。」



 ラックは大剣を両手で持つと


気を集中させながら、ギューッ!っと


両手で圧力をかけていく。


「エリック、コップに水を汲んできて。」



 エリックは駆け足で


バケツまで走ってコップに水を汲んで戻った。



 「サンキュ。」とエリックにラックは言った。


「もうちょっとで出来るから待ってね。」


マナの大剣をラックは両手で圧縮していく。


気付けばもうてのひらに収まるサイズまで


マナが圧縮されていた。


ラックはそのマナを両手で包み込んで


ギューーーー!っと押し込んでいく。


ラックは右手のてのひらを開いた。


ラックの掌の上には小指の先ほどのサイズの


七色に輝く小さな石が乗っていた。



 「マナが物質化できるなんて?! 」


エリックは驚いてそう叫んだ。



 「いや、エリックが考えてることは


わからないけれど、多分、そういう事ではないよ。


説明すると本当に長くてややこしい話になるから


いまは聞かないでね。」



 エリックから水の入ったコップを受け取ると


ラックはコップの上でマナで作った小石を


親指と人差し指で粉々に砕いた。


コップの中にマナの粉が入っていく。


「あ。マドラーって無かったっけ? 」



 「スプーンならあります。


すぐにとってきます。」


スプーンを食器入れからエリックは持ってきた。



 エリックからスプーンを受け取ると


コップの水をラックはかき混ぜた。


ラックはコップを手に持って掲げた。


「はい。聖水の完成です。」



 エリックは好奇心一杯の目をコップに向ける。


「ラックさん、お願いです。


少しだけ、聖水を見せてもらってもいいですか? 」



 「いいよ。バーニーに飲ませてあげてね。」


エリックにラックはコップを渡した。



 エリックはコップの水を凝視ぎょうしした。


「光り輝いている。聖水ってこんな形で作れるんですね。」


エリックは聖水を飲んでみたい衝動にかられたが


自制すると、屈んで、手でバーナードの上体を起こして


コップの水をバーナードにゆっくりと飲ませた。



 「うう・・うん。」


バーナードは目を開けた。


「ふはぁ~。おはよう。


もう朝か・・・なんだか寝たりねぇな。」


バーナードは寝袋から目を手でこすりながら


ゆっくりと出て立ち上がると


頭を掻いて、大きなアクビをした。



 エリックは感動した。


「ラックさんってマジで神様なんじゃないっすか。」



 ラックは焚火の方へ歩きながら


「人間だよ。ごくごく普通の人間だよ。」と


エリックに言った。



 「おなかすいた~!!! 」


馬車からテューネがそう叫んで降りてくるのが見えた。



 続いてノーラは馬車を降りると、


思い切り何度もジャンプして


ラックに向かってノーラは両手を振った。






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