パーティー名
新しい仲間、エリック・アルブルドを加え
5人は馬車に乗り込み森を抜けた。
空は朱く染まり始めている。
一行は『ボモガロ』という小さな町に
一夜の宿を取る事にした。
ボモガロの街の『鳩小屋亭』という宿屋に入ると
受付でラックは広い部屋を取った。
ノーラとテューネは女同士で同室の2人部屋。
バーナードとエリックも男同士で
同室の2人部屋を取った。
当初、ラックはエリックと
同室をするつもりだったが
バーナードがエリックと同室したいとゴネた。
今日の試合の反省会を
エリックと一緒にバーナードはしたいらしい。
ラックが広い部屋を取った理由は
全員で集まって会議をするためであった。
宿屋の1階の食堂での夕食は
町が帝都からも近いため、
物の流通は盛んなようだった。
そのためか豊富な食材を
使った料理が食卓にのぼった。
ラックら5人は小さな町の宿屋の料理には
期待してなかった分、
料理の華やかさにテンションが上がる。
「あの天馬、めちゃくちゃ速いな。
日中に森まで着くだけでも速いのに
森まで抜けてボモガロの町まで着いちまった。
金属の馬車に山盛りの荷物を載せて5人乗ってだぜ。
天馬を盗賊が欲しがるのも理解できるな。」
バーナードはご機嫌で肉を頬張りながら言った。
パンをちぎりながらラックは口を開いた。
「借り物だから奪われたら困るよ。
結構、有名な天馬らしくてね。
弁償できるような天馬じゃないんだ。」
「ご主人さま、あの天馬はなんという名前ですか? 」
エリックは天馬に興味を示した。
「『素敵な日差し』って名前だよ。」
「え!? ラブリーサンシャイン!
プレスミン公国の王様が乗ってた天馬じゃないですか。
そんな凄い天馬をお持ちとはさすがご主人様。」
「うん。そうらしいね。
エリック、その、えっと、
ご主人さまってのはいいんだけれど、
ご主人さまって呼ぶのは
執事として家で働くようになってからにして。」
「わかりました。ラック。」
「極端! 中間をとってラックさんって呼んで。」
「プッ」っとテューネが吹き出す。
「そんなのどっちでもいいでしょう。
肝がちっちゃいよ。ラック。」
酒を片手にラックをテューネが指さす。
「ちっちゃいとか言うなよぉ。
雇い主と使用人の関係で形式は大事だろ。」
テューネにラックは不満げな顔を向けた。
「エリックさんが仲間に入ってくれて。
本当に心強いです。
クエストを無事に達成できる気がします。」
そう言ってノーラはサラダをフォークで口に運んだ。
ラックは思い出したかのような顔をした。
「あ。そうだ。このメンバーの中で
俺が実力を把握できてないのはノーラだけだった。
食事が終わったら作戦会議をするけれど
そのあと、部屋に少し残ってくれる? 」
「ええ。わたくしは全然かまいませんよ。」
バーナードにラックは視線を向けた。
「バーニー。
ブエレンの街にこの調子なら
どのくらいで着きそうかな? 」
バーナードにラックは問いかけた。
バーナードは口を開いた。
「おそらく明日の昼までには現地に着けるだろう。」
「そっか、明日は敵をガツンとやってやろう!
エリックが加わってくれた事で
当初よりもずっと作戦が練りやすくなった。
でも、チームワークが無いと上手くはいかない。
チームの結束の意味でも
この機会にパーティー名を決めたいと思います! 」
「あ。そうだな。全然、気にしてなかったぜ。」
「オレっち、冒険者じゃないんですが
パーティーに入れてもらっていいんですか。」
「いいさね。一緒に戦う仲間じゃないか。」
エリックの肩にテューネが手を置いた。
「良い名前をつけたいですね。
わたくしも考えてみます。」
ラックは大きく頷いた。
「では、パーティー名を思いついた人から
手を挙げてください! 」
「はい! 」
最初にノーラが手を挙げた。
「はい。ノーラさん言ってみて。」
ノーラにラックは手を向けた。
「『可愛い天使達』ってどうですか? 」
「はい。プリティーエンジェルズ頂きました。
他にはありませんか?」
バーナードが手を挙げた。
「『竜を討つ者たち』ってのはどうだ。」
「はい。ドラゴンスレイヤーズ頂きました。
他にはありませんか?」
エリックが手を挙げた。
「『勇気の旗印』ってどうですかね? 」
「ブレイブリーフラッグ頂きました。
テューネさんありませんか? 」
テューネは考え込んだ。
「う~ん。酒の友達ってことで『酒のつまみ』ってどう。」
「スナックス頂きました。
じゃ、俺も候補を出します。
俺たちは雑草の集まりのようなパーティーですが
高ランククエストを達成するはずです。
雑草の蒲公英が花を咲かすという意味合いで
『蒲公英』ってのはどうでしょう。
では、多数決をとりますね。
何度、手を挙げてもらってもいいですよ。」
多数決はプリティーエンジェルズとダンデライオンが
3票で同じ得票数であったが、
その二つでもう一度、多数決した結果、
『蒲公英』に決定したのであった。
はじめまして。
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