盗賊団
冒険者ギルドから出発したラックたちは
帝都を出て街道を馬車で西に進んでいく。
「おい。道が粗くなったのに
全然、馬車の揺れや振動が少ねぇ。なんでだ?」
「軍用だからね。
緩衝装置が効いているんだ。」
「緩衝装置ってなんだ? 」
「金属の発条が振動を吸収してくれている。」
「すげぇな。これなら長時間、
馬車に乗ってても疲れねぇぜ。
この座面のクッション性も抜群だしな。」
「うん。借りる事が出来て本当によかったよ。」
「それにしてもギルドが
よくもこんなに物資を提供してくれたもんだな。
この物資だけで報酬の金貨200枚を
超えてたりしてな。」
馬車の操縦席で隣で馬車を操縦するラックに
バーナードは話しかけた。
「実は結構、大変だったんだよ。
昨日はゴネにゴネたんだよ。
無茶なクエストなんだから
物資くらいは融通してくれってね。」
バーナードは馬車の仕切りに
足をかけて組んでだらしない格好で寝そべっている。
「あのおっかねぇギルド長によく言えたもんだ。
1年前にギルド長に稽古を
つけてもらった事があったんだけどさ。
意味がわかんねぇ~ほど強かったんだぜ。
現役ならS級でいけんじゃねぇかな。」
「そうなんだね。
腹を割って話せば、理解のある人だと思うよ。
俺がデスト家の人間だから気を使ってくれたのかも。」
「ああ。デスト家か。そりゃありうるな。
デスト家は帝国建国の功臣16家の一つだよな。
功臣で唯一国持ちになれなかったが
いまも帝国の重臣だからな。」
「え? そんなにすごい家なの? 」
「なんでお前が知らねぇんだよ。」
「うちの嫁の実家だし、分家だしね。」
「婿養子か。あはははは!そりゃ嫁に気を使うわな。」
「そんなに笑う事ないじゃない。」
「いや、すまん。
お前の今朝の落ち込んだ顔を思い出しちまった。」
「本当に奥さんと向き合うのは大変なんだからね。」
「オレも結婚したことあるからわかんぜ。」
「そうなんだ。離婚したの? 」
「ああ。仕事、仕事で家庭をかえりみなかった。
娘も大きくなってるんだろうがずっと会えてねぇな。」
「なんか嫌な事聞いちゃったね。ゴメン。」
「気にすんな。昔の話だ。
お前はオレみたいになるなよ。」
「うん。奥さんを大事にしたいって思ってる。」
「おう。自分の女の手を離すんじゃねぇぞ。」
「ねぇ、この先、分かれ道になってるけれど
どっち行ったらいいのかな? 」
「真っすぐ行くのが最短なんだが
真っすぐ行くと大きな森があってな。
盗賊団が出て、通行代を要求してくんだよ。
人殺しをするでもなしって事で
討伐の対象にもなってない。」
「それじゃ冒険者は戦いにくいね。」
「仕事でもないのに人殺ししてレベル下げてまで
盗賊と戦いたい奴はいねぇだろうな。」
「通行代っていくら? 」
「1人あたま銀貨5枚だったな。」
「時間が惜しいし、森を通ろうか。
通行代は俺が全額払うからさ。」
「報酬が安いクエストなのに
経費ばっかりかかるな。
通行代はオレと割り勘だ。
お前ばかりに頼ってられるかよ。」
「じゃ、割り勘ね。」
ラックは通行代の半分の金貨1枚を革袋から出した。
バーナードも腰の小銭入れから金貨を出すと
「オレの担当分だ。」と言って金貨をラックに渡した。
馬車は真っすぐ進んだ。
やがて森が見えてきて森の中に入り
舗装されていない道を進んでいった。
ラックは気功術を使って気を周囲に張っていた。
周囲から多くの人の気配が
ラックの馬車の方向に向かってくるのを感じた。
「そろそろじゃないかな。何か作法とかある? 」
「あいつら木の上から矢を撃ってくんだよ。
そしたら、歩みを止めて両手を上げるって感じだな。」
カン! カン! と馬車に矢が2回当たった音がした。
ラックは手綱を引いて馬車を止めた。
周囲に32名の人間がいるのをラックは感じた。
ラックとバーナードは馬車を降りると両腕を上に上げた。
盗賊団に殺気はなく、
若い男性の盗賊1人がラックたちに駆け寄ってきた。
「お前たち人数は何人だ? 」
「俺たちと馬車に2人の合計4人だ。」
盗賊にバーナードは答えた。
盗賊は馬車をのぞき込むと荷台ものぞき込んだ。
「確かに4人だ。金貨2枚払えるか。」
「ええ。ではこれを。」
ラックは若い盗賊に金貨2枚を渡した。
「毎度あり。そんでお前ら冒険者だろ。
あんな大荷物でクエストか? 」
「ああ。食屍鬼が集団発生したらしくてな。」
若い盗賊にバーナードは答えた。
「そりゃ大変だ。森に出られちゃ商売あがったりだな。
あんたらには頑張ってもらわなきゃならんね。
最近は怪物がよく出る。気をつけて行けよ。」
若い盗賊は、そう言うと、さっさと森の中に姿を消した。
ラックとバーナードは馬車に戻った。
馬車の扉が開いてテューネが顔を出した。
「ああ。森の盗賊に通行代払ったんだね。」
「おう、通行代はラックとオレが払った。
お前らは気にしなくていい。」
「そんなのいけません。
仲間なのですからみんなで割り勘しましょう。」
ノーラがテューネの背後から顔を出した。
「うるさい。扉を閉めろ!
盗賊の気配が消えてない。矢で撃たれるぞ。」
バーナードは険しい顔をした。
「はわわわわ。すぐ閉めます! 」
ノーラはテューネを引っ張ると馬車の扉を閉めた。
大柄の盗賊たち5人が
木から飛び降りて着地すると馬車に近づいてきた。
髭面で大柄の盗賊が歩きながら口を開いた。
「お前ら! 全部置いていけ! 」
ラックは馬車の操縦席から飛び降りると
こちらに来る盗賊の男たちの方に歩き出した。
「通行代は払ったはずだ!
通行代を取って、身ぐるみ剥ぐなんて真似したら
あんたらの信用が落ちてここを誰も通らなくなるぞ。」
ラックは髭面の盗賊にそう叫んだ。
「ああ。そうだな。
でもな。その馬車とペガサスを売れば
俺たちは盗賊なんてしなくても
生きていけるだけの資金を得られる。」
ラックに髭面の盗賊はそう答えた。
「何を焦ってるんだ。理由を聞かせろ! 」
盗賊にラックは問いかけた。
「お前らがクエストに行く理由さ。
怪物がこの森にも出現しはじめた。
もう、この森は安全でもなんでもねぇ。
俺たちはもうこの森から抜け出したいんだ! 」
髭面の男は律儀にラックに答えた。
「俺たちは今から怪物の群れを倒しに行くんだ。
頼むから邪魔をしないでくれ!
あんたらもギルドに怪物討伐依頼を
出せばいいじゃないか! 」
「フン! 残念だ。交渉決裂だな。攻撃準備! 」
髭面の指示で森に潜む周囲の盗賊たちに殺気が宿った。
髭面の男がどうやら盗賊の頭目だった。
ラックは悔しそうな顔を浮かべて
頭目の方へと歩み寄る。
頭目とラックは対峙した。
「俺の方こそ残念だよ。
人を傷つけずに生きていたかったのに。」
ラックの目が少し潤んでいた。
はじめまして。
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