出発
「やっぱ、街の人達からの視線が痛いわぁ。」
ラックは冒険者ギルドから馬車屋に歩いて行った。
馬車屋でミスリル銀製の軍用馬車を引き取って、
馬車に乗って冒険者に向かう途中である。
銀色に輝く馬車は帝都でもとても目立っていた。
しかも、馬車を引いているのはペガサスである。
神々しすぎて、誰でも足を止めて見てしまうであろう。
「ラブリーサンシャインなら
この馬車を引けると思ったけれど
その様子だとかなり余裕って感じだね。」
ペガサスにラックは笑顔を向けた。
ペガサスも運動が出来るのが嬉しいらしく
ヒヒィ~ン と返事したように鳴いた。
カッパ! カッパ! カッパ! と
ペガサスはリズムよく蹄を鳴らして歩みを進める。
ラックが馬車に乗って冒険者ギルドに着くと
門前の冒険者たちもドン引きで足を止めた。
ギルド前の通り沿いに多くの木箱が積まれていた。
木箱の傍にバーナードとテューネとノーラがいた。
それだけではなくインドゥやボイマン、
スキンヘッドの男という以前に
ラックに喧嘩を売った3人組がいた。
「おいおい。これまた、
どえらいもんに乗ってきたな。」
バーナードは馬車を見て口をポカンを開けた。
「ギネタールにいたペガサスかい。
帝都に連れてきちまったんだね。プププ。」
テューネは腹を抱えて笑いを押さえた。
「美しいです。本当に美しい。」
ペガサスの輝きにノーラは感激していた。
ラックは馬車の操縦席からパッと飛び降りた。
「すごい量の物資だね。大変だったろ。
みんなばかりに力仕事させて本当にごめんなさい。」
仲間たちにラックは頭を下げた。
「いや、ほとんど、こいつらが運んでくれたんだ。」
ボイマンら男三人組にバーナードは手を向けた。
ラックはボイマンに歩み寄って前に立った。
ボイマンら3人に緊張が走った。
ラックはボイマンら3人に向かって
深く頭を下げた。
「先日は大変、失礼な事をしてしまい
申し訳ありませんでした。
物資を運ぶのを手伝って頂き
本当にどうもありがとうございます。」
赤い兜のボイマンは口元を指先でかいた。
「俺たちも悪ふざけが行き過ぎた。
すまんな。バーナードには命を救われた。
借りを早く返したかっただけだ。」
「先輩方、改めて自己紹介させてください。
F級冒険者で、名前はラック・デストです。
これから仲良くして頂けたらうれしいです。」
ボイマンら3人はどよめいた。
「おい。 ギネタールの金色の英雄か。
そのペガサス。間違いねぇ。道理で強いわけだ。
がはははははは!
俺たちが喧嘩を売る相手を
間違えた身の程知らずだったんだな。」
ボイマンは妙にスッキリした表情を浮かべた。
「俺は赤兜ボイマンだ。そんで、
髭の男が怒涛インドゥ、ほんでハゲのボウボだ。」
「ボイマン、ハゲはやめてくれよ!
玉頭ボウボだ。坊主、よろしくな。」
「俺たちはB級パーティー『天下三狼』だ。
過去の事はお互い水に流して仲良くしていこう。」
ラックにボイマンは右手を差し出した。
「こちらこそよろしくお願いします。」
ボイマンとラックは強く握手をした。
ラックとバーナードとテューネとノーラ、
それにボイマン、インドゥ、ボウボの7名は
手分けして銀馬車の荷台に物資を積んだ。
「積み終わった。みんなご苦労様です。」
ラックは全員に向かって声をかけた。
「お疲れ。ボイマンたちにも感謝だな。」
バーナードはボイマンと肩を組んだ。
「天下三狼の皆さんも
どうもありがとうございます。
今度、お手伝いできる事が
あったら気軽に声をかけてください。」
ボイマンら3人にラックは声をかけた。
「ああ。その時は遠慮なく頼むぜ。」
ボイマンは片目を閉じて親指を立てた。
「じゃ、女性陣は馬車に乗って。
俺とバーナードは操縦席に乗って交代で操縦する。」
ラックが指示を出すと
「あいよ。」「はい! 」と返事をして
テューネとノーラは馬車に乗り込んだ。
「なんだ。オレも座席に乗りたいぜ。」
バーナードは不満げな顔をした。
「そんな顔しない。
さっさと乗ってくれよ。」と
バーナードにラックは乗車を促した。
「ま、しゃ~ないか。」
バーナードは操縦席に乗った。
ボイマンは口を開いた。
「お前ら、大変なクエストを受けたらしいな。
絶対に生きて帰ってこいよ。」
「もちろん、依頼を受けたからには
絶対に達成して帰るつもりですよ。」
ボイマンにラックは親指を立てた。
「A級のオレがついてんだぜ。
大丈夫に決まってんだろ。心配すんな。」
ボイマンにバーナードは言った。
窓から様子を見ていたギルド長と
受付嬢もギルドの入り口から出てきて
ラックに歩み寄った。
「ラック君、今回のクエストは
帝国の安全保障に関わる重要なクエストだ。
F級とはいえ君の活躍に期待している。」
ギルド長ボーグはラックの手を握った。
「ギルドからの物資支給、感謝します。
多大なご厚意に報いるために期待に応えたいです。」
ボーグにラックは頭を下げた。
「がんばれ! がんばれ! ラックさん!
フレー! フレー! バーナードさん!
気合いだ! 気合いだ! テューネさん!
ファイト! ファイト! ノーラさん! 」
受付嬢は拳を振り上げてラックたちを激励した。
「では! 西の街ブエレンに向けて出発! 」
ラックは手綱をピシっと揺らすと
ゆっくりと銀の馬車は前進して動き出した。
ギルド長や受付嬢、天下三狼たちは
馬車が見えなくなるまでずっと手を振っていた。
はじめまして。
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