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パーティーリーダー

 ラックはバーナードのパーティーに


仲間入りすることになった。



 食堂レストランで料理を囲みながら


ラックと他3人で親睦を深めていたが


「パーティーリーダーはラックでいこう。」


突然、バーナードがそう切り出した。



 突然の提案にラックは困惑した。


「リーダーはどう考えたってバーニーだろう。


なんでFランクで


しかも新人の俺がリーダーなんだよ! 」



 ラックの意見は誰が聞いても


正しいと思われるはずだった。



 バーナードは首を横に振った。


「オレは目の前の敵を叩くことに専念したい。


全体を見ながら的確な指示を出したり


仲間のフォローをするなんて事には


オレは向いてないんだ。


戦争を経験したお前なら状況判断ができるだろ? 」



 「いや、俺だって目の前の敵に精一杯になるよ。


それなら俺よりランクが上のテューネさんや


後方から全体を見れるノーラさんだって適任だろ。」



 テューネが真面目な顔で口を開いた。


「あたいがリーダーをしてもいいけれど


悔しいけれどあたいはラックより弱い。


今回のクエストは支援職であるノーラの護衛を


したいと思ってるんだ。


護衛は護衛対象のノーラに視線を奪われる。


全体の指揮なんてとてもじゃないが出来ないね。」



 ノーラも口を開いた。


「わたくしは法術の詠唱や


回復対象の確認作業に集中したいです。


きっと、敵を避けるだけでもやっとなので


指示を出す余裕も実力もありません。」



 バーナードが口を開いた。


「情けない話だが団体行動が


苦手な冒険者の集まりみたいだ。


テューネが太鼓判を押すほどの実力なら


ラックは自分で自分を守れるんだろ。


敵の殲滅せんめつはオレにまかせて


全体を観察して仲間に指示を出したり


フォローに回ってはくれないか。」


ラックにバーナードは頼んだ。



 ラックは悩んだが


全員一致の意見なら仕方がないと


気持ちを切り替えた。


「わかった。俺は自分の実力を


過信しているわけじゃないけれど


自分の身は守れる自信くらいはある。


でも、俺がリーダーになるからには


俺の意見を尊重してもらえるかい? 」



 「もちろんだ。」



 「いいよ。


無理を言ってるのはあたいらだからね。」



 「わたくしはラックさんの指示に従います。」



 「では、俺がリーダーって事で


今回のクエストについて話し合おう。」



 ラックの意見に全員が賛成した。



 バーナードはテーブルの上に


クエストの目的地の地図を広げた。



 目的地『ブエレン』という街は


ラックのイメージよりも広い街であった。


「こっちは戦力的に不利すぎる。


だから敵の首領を奇襲で討つという作戦で


いきたかったんだけれど無理だね。」


地図で街の広さを見てラックはそう述べた。



 「ああ。敵の首領は不死魔術師リッチなのは


わかってはいるが


どこに潜んでいるかまではわからんからな。」



 「あたいらじゃ、


回復アイテムも魔力も不充分すぎるわね。」



 この世界は魔力は魔石で作った魔法薬を


飲むことでしか補給できず自然回復はしない。



 「マナの魔術技法はまだ確立されていないのか。」



 テューネは驚いた表情をラックに向けた。


「ラック。マナなんて単語をよく知っているな。


マナを使った奇跡はアルブルド剣術の秘伝だよ。


マナの魔法への応用は魔法学者たちの夢らしいね。」



 「そっか。夢の技法なんだね。


魔法薬は安価じゃないから


物量作戦は予算的にも無理だ。


じゃ、法術はどこまで使えるんだい? 」


ノーラにラックは問いかけた。



 「神の奇跡は何度でも使えるのですが


使うと精神の疲労がとても激しいのです。


法術の連続使用は


意識が保てなくなる恐れがあります。」



 「それじゃ、法力は自然回復は見込めるんだね。」



 「はい。ある程度、間隔を置けば


かなりの回数は使えます。」


ラックの問いかけにノーラは答えた。



 「それはプラスな要素だね。」


ラックは真面目な顔から笑顔になった。



 「バーニーの槍術はどんな特性を持つの? 」


ラックはバーナードに問いかけた。



 「オレは槍術スキルに全振りだな。


魔力はまったく使っていない。


不足している実力は装備で補っている。


そのせいで装備に金ばかりかかっちまうがな。」



 「へぇ~。バーニーのレベルっていくつ? 」



 「82だ。」



 「82!!! 凄すぎるじゃないか。」


ラックは驚きの声を上げた。



 テューネもノーラも目を丸くして驚いた。



 (スキルに全振りは正しい判断だ。


やはりバーニーはかなり強いんだな。)


バーナードの実力をラックは確信した。



 「大体、みんなの実力は理解できた。


でも、敵の実力がわからない。


それじゃ、達成は難しいよね。


何か、敵に対して有利になるような情報を


誰か持っていないかな。」



 バーナードが口を開いた。


「敵の食屍鬼グールは本物の食屍鬼ではないらしい。


人間の死体を使って、


不死魔術師リッチが死霊魔術で


悪魔を模して作り出した怪物モンスターだと


ギルドの受付嬢が言っていたぞ。


本物の食屍鬼なら勝てるのはS級のみだからな。」



 (なるほど、本物の悪魔に


勝つのはまだ人間には無理なのか。


悪魔が幹部をしているこの冒険者ギルドの


情報なら確かだろうな。)


ラックは考えを巡らしていく。



 「死体の怪物ならあたいの火属性が有効だろうね。」



 「うん。そうだね。


火属性は死霊系に有効だろうから心強い材料だね。


それにノーラの信仰系の法術は


死霊系の怪物に有効な属性を持ってるだろうから


ノーラの法術も敵に有効だと言えるね。


このパーティーは結構、敵との相性はいいのかもしれない。」



 「すみません。


わたくし攻撃的な法術はまだ未習得なのです。」


ノーラは申し訳なさ気に肩をすくめた。



 「気にしないで。


支援職は回復や支援に集中してくれれば十分だからね。」


ノーラの気持ちにラックは配慮をした。



 バーナードが口を開いた。


「ラックの言う通りだ。


攻撃役はオレに任せればいい。


オレの武器なんだが


この槍、『断罪のスピア』は


敵が犯した罪の量に比例して


敵に与えるダメージが


加算されていく特性を持ってる。


誰が罪を決めているかはわからんが人間を殺したり


迷惑をかけている奴らにはかなり有効なはずだぜ。」



 (それって、俺がその槍で攻撃されたらヤバいんじゃ・・)


バーナードの槍にラックは少し警戒心を持った。


しかし、バーナードとは友達でよかったともラックは思った。



 「なるほど。バーナードには悪いけれど


バーナードを攻撃の軸に頑張ってもらうことになる。」



 「初めからそのつもりだ。」


そう言ってバーナードは胸を張った。



 ラックは席を立ち上がる。


「幸いなことに、このクエストに


達成までの期日が設定されていない。


でも、敵が他の街に移動したら


失敗と判定するとは明記されている。」



 テーブルに置かれたクエスト依頼書を


ラックは手に持って掲げた。



 「過酷なクエストになると思うけれど


時間をかければ攻略することができるはずだ。


必ず達成して全員でこの食堂レストランで祝杯をあげたい! 」



 「オオォォォ! やってやろうぜ! 」と


バーナードが拳を掲げた。



 「正直やる気がなかったんだけれど、やる気出てきた。」


テューネも拳を掲げる。



 「わたくしも精一杯がんばります! 」と


ノーラも拳を掲げた。



 悪魔としてのラックならば、


楽勝なクエストだとラックは思ったであろう。


しかし、今回のクエストは


人間ラックとして、


人間の仲間と協力しながら


達成を目指すクエストである。



 ラックは、人間のラックとして


生きがいを感じ始めている自分に


何故だか、嬉しさを憶えるのであった。








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