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進軍

 エトミア軍第一軍約5000は


騎兵隊1000を先鋒に配置し


軍の陣形を魚鱗の陣形に変化させながら


ゆるやかに南西に進軍し始めた。



 エトミアの白聖虎騎兵2000は


定位置を動かず、西のプレスミン軍を牽制している。


白聖虎騎兵1000を指揮するクルトは


プレスミン軍の様子を観察していた。


「まずいな。


プレスミン軍から不気味さが漂い始めている。


プレスミン軍はダイモンド軍に


本気で肩入れするつもりなのか。


その動機は何だ?・・・


ダイモンド家に正義があるとでもいうのか。」


クルトはプレスミン軍の動きに神経を張りつめていく。






 「父上、何だか、怖いのです。」


ファルミットの傍で馬上にいたモーリスが


怯えていた。


モーリスはファルミットの三男である。


モーリスはこの戦いが初陣であった。



 「そうか、モーリス、戦争とは怖いものだ。


わたしだって怖い、その恐怖に打ち勝ってこそ


勝利を得ることができるのだ。」


ファルミットはモーリスにそう諭した。



 「いいえ、何だか違和感があるのです。


わたくしたちは死の行進を


しているようではありませんか。」



 「モーリスよ。


恐怖に心を囚われるな!


目の前の敵を無心に斬ればよい。


敵をよく見て見ろ。


フィガロの兵は1000にも満たない。


あのような田舎兵士に何が出来るものか。


案山子を斬るようなものではないか。


モーリス、不吉な物言いはよすのだ。


上の者の発言は兵の士気にかかわる。」



 「はい。わかりました。父上。」



 ファルミットは内心では不安を抱いていた。


フィガロとファルミットはかつての同僚である。


フィガロの得体の知れない強さを知っていた。



 (もしかしたら、誘い出されたのか。


いや、ここで撤退すれば、


フィガロは次にどんな一手を


仕掛けて来るかわからない。


ここで討ち取っておかねばならん。


フィガロの主力がいない今こそ好機。


絶対に好機のはずなのだ。)


ファルミットにはそんな思いがあったが


息子モーリスと同様に


言い知れぬ不安がファルミットの心に影を落としていた。






 フィガロは敵軍の様子を観察していた。


フィガロは敵軍の動きに反応して


馬を駆けるとラックの横で馬を止めた。


「ラック、敵軍に向かってゆっくり前進しろ。」



 「了解! なんだかやる気が出てきました。


ずっと待機だったんで退屈すぎたんでしょうね。


体を動かしたくてウズウズしていますよ。」


ラックは元気な声を出した。



 「さっきまでのやる気のなさで心配だったが


大丈夫そうやな。それでな、共の者を連れていけ。」



 ラックは真面目な眼差しをフィガロに向ける。


「事前の打ち合わせで言ってた作戦ですか。


その作戦って本当に出来るんですか?」



 「ああ。出来る。


共する者はお前と同じく化物じみた男よ。


お前にペガサスを貸した意味を察してくれ。」



 「へぇ~。バケモノかぁ。


ま、少なくとも俺は人間ですからね。」



 「そうかな。


数千の敵兵を前に


お使いにいくようなお前の気楽さは


馬鹿か化物のどちらかだろうよ。


まぁ、今は、その事で議論するつもりはない。」



 黒装束に身を包んだ青年が馬に乗って現れた。



 「確かに、彼、只者ではない気がしますね。」


ラックは馬に乗って近づいてくる青年を見て感想を言った。



 「はじめまして。」


そう言って、青年はフードを脱いだ。



 「おおお! 獣人ですか! 」


ラックは驚いた素振りを見せた。



 「サーカランと申します。


主に諜報活動をしておりました。」


サーカランの素顔は


頭には可愛らしいタレ耳がついており


毛は灰色で緑の瞳の顔は猫そのものだった。



 ラックはサーカランを目を細めて見つめた。


「なるほどねぇ。(獣人のフリした悪魔か。)


これは楽しみだ。よろしくサーカラン先輩。」


ラックは遠い過去の記憶からか、


サーカランが悪魔だと判別ができた。



 「ホサ村の英雄ラック殿、


こちらこそよろしくお願いします。」



 フィガロが口を開く。


「サーカランは先代から仕える家臣や。


東方の秘術である『忍術』と


いう魔術のような術を会得しておる。


作戦通りに、サーカランをよろしく頼む。」



 「りょうかい。


定位置ってどこだったっけ。


サーカラン先輩、そこまで案内を頼むよ。」



 「はい、では私が先に参りましょう。」


サーカランは馬の腹を軽く蹴ると前進を始めた。



 「じゃ、領主様、行ってくるよ。


報酬は働き次第で上乗せしてくれていいんだからね。」



 「わかっとる。心配すな。


エトミア軍にお前らのチカラを見せつけてこい! 」



 ラックはサーカランの後ろについてペガサスを歩かせる。



 「ラック、サーカラン、頼んだで。


こっちは正規兵が100名もおらん。


あとは武装して兵隊に見せてるだけの市民や。


籠城戦ならまだいいが野戦ではボロが出るからな。」



 「張りぼての前で見栄を張ってるご領主さまは


本物の魔術師だと思いますよ。では、またあとで。」


ラックは後ろを向いてフィガロに手を振った。


 

 フィガロはラックの言葉に苦笑した。


「ふん。魔術師やない、わしは道化師や。


道化師のわしをお前らのチカラで魔術師にしてくれ。


(先代様、サーカランのチカラを先代は


戦場では用いなかった。


人間が使ってはならんチカラと思われておられたんやろ。


しかし、わしは、ここで使わねばならん。


東の覇王は、人ならざるチカラを借りて武装し始めているという。


これからは人間同士の戦場ではなくなっていくやろう。


そんなもんは戦争やない。ただの地獄や。


わしは、もうこの戦いを最後に隠居するつもりでおります。


だから、父上、どうか堪忍してください。)」


フィガロは先代ダイモンド家当主であった父親に


思い馳せて両手を合わせた。






はじめまして。


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