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奇襲

 エトミア公国軍は南西のギネタールとプレスミンの連合軍と


北西のコルクスター公国軍の両方に対処しなければならなくなった。



 本営の総大将ハルク・エトミアは作戦を考えていた。


「ギネタールの連合軍は第一軍と第二軍の


1万の軍勢で十分に対処できるはず


最悪、第一軍第二軍が負けてもギネタール連合軍が


エトミア公国を侵略することはできないだろう。


プレスミン軍は他国への侵略行為に手を貸すまい。」



 王弟ハルクの側近であり


副将のボルドス・ビューイック伯爵は口を開いた。


「ならば、コルクスターへの対処の為に


本軍を北西に移動させると


閣下はお考えでしょうか。」



 「うむ。兄上には連絡の早馬を送った。


コルクスター公国が万が一、侵攻してきたとしても


兄上がコルクスター軍討伐に軍を動かしてくれるはず。


とはいえ討伐軍の兵の招集には時間がかかるだろう。


それまでなんとしても時間を稼がねばならん。


第一軍、第二軍には無駄な戦闘は避けるよう伝令を飛ばした。


第一軍、第二軍は出来るだけ無傷で温存したいからな。


相手が仕掛けてこなければ夜に移動して


本軍に合流せよとの命令も伝令に伝えてある。」



 「閣下、この状況、


フィガロが作り出したと私は感じております。


コルクスターの動きがどうにも早い。


コルクスター公国が情報を事前に独自に察知して


知っていた可能性もありますが


私はフィガロが流した可能性を疑います。


奴は小細工が得意ですからな。


フィガロの手の平で踊ってやることはありません。


出来れば、一度、自国領内に全軍撤退して


対処してはいかがかと。」



 「それも一理あるが、兄上はそれを許すまい。


敵と一戦も交えずに逃げ帰ったとなれば、私でも死を賜るだろう。


ここはなんとしても兄上の軍が到着するまで時間を稼ぐほかない。」



 「仕方ありませんな。御意のままに。」



 エトミア公国軍本軍はコルクスター公国軍への


対処のために山道を進軍し北の街道に出る事になった。


本軍は左右に崖のある山道に差し掛かった。


道幅はかなり狭く、


兵士は横に5列になってその山道を進んでいく。


総大将がいる本隊が山道の半ばに到着した時、


ゴロゴロ・・・・・・ゴロゴロ・・・


ダーーーーーーーーーーン!!!!!!


大きな落下音が響き渡った。


落石である。


大きな石が崖上からいくつも落下してきた。


エトミア公国軍本軍は落石で分断され大混乱に陥った。


道幅が狭く、落石に前方を阻まれ


本軍の本隊は山道で、すし詰め状態になった。


ワァーーーーーーーー!!!!と


本軍の後方から大勢の雄叫びが聞こえた。


ダイモンド家の別動軍の奇襲である。


ダイモンド家次男ロベルト・ダイモンドが


率いる白聖虎騎兵1000であった。


白聖虎には白聖虎でしか対抗できない。


しかし、エトミア本軍に白聖虎騎兵はいなかった。



 総大将ハルクは馬上で身動きが取れずにいた。


「ぐぅぅ。何が起こっておる。」


何が起こっているのかを伝えるものがいたとしても


すし詰め状態では総大将の元までたどり着けない。


後方から白い虎が兵士たちを吹き飛ばしながら


総大将ハルクに向かって迫ってくるのが見えた。



 副将ボルドスは馬を降りてハルクの元に歩み寄る。 


「閣下。赤い旗に金丸模様、ダイモンド軍ですな。


フィガロが白聖虎をこれほど多く所有していようとは。


悔しいですが、もはやこれまでかと。


閣下、降伏なさいますか?」



 ハルクは目を瞑り首を横に振った。


「ふん。降伏してどうする。


兄上は敗軍の将を決して許しはしない。


バルドス、私は悔しすぎて、むしろ清々しい気分だ。


フィガロにはあの世で再会したら文句を言ってやるさ。」



 バルドスはハルクに笑顔を向ける。


「そうですか。では閣下、私はあの世とやらに


先に行って閣下をお待ち申し上げております。


2人でフィガロを殴ってやりましょうぞ!」



 バルトスは剣を抜くと


単身、白聖虎騎兵隊に突撃した。


バルトスは白聖虎に首を食いちぎられ果てた。



 ハルクは馬上でバルトスの最後を見届けた。


「バルトス、勇敢な最期であった。


フィガロ!お前なんかに殺されてやるものか。


せいぜい長生きするがいい!あの世で待ってるぞ!!!」


ハルクは自身の剣を抜き、自分の首の頸動脈を斬って自害した。



 エリミア公国ギネタール侵攻軍総大将ハルク・エトミアが


死んだ事で、この戦争の勝敗は事実上、決した。


しかし、その事実がエトミア公国本国や


エトミア軍第一軍、第二軍に届くまでには時間がかかる。


ロベルト・ダイモンドとその配下たちは


ハルクの死体を発見すると、


白聖虎から降りて総大将ハルクの死体に対して敬礼した。



 「ハルク殿下。私が幼少の頃、よく遊んで頂いた事


今でも忘れてはおりません。」


ロベルトはハルクにそう語りかけて一礼した。


ハルクの首を確保すると、すぐに


ダイモンド白聖虎騎兵軍は東に向かって駆けて抜けて行った。







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