ギネタール平野
ラックは敵軍の東の位置に留まり動かない。
ラックが着陸して、しばらく時間が経過しているが
ラックに対する敵軍の動きはなく
敵軍はラックに攻撃を仕掛けては来なかった。
ペガサスが平野に着陸した事実を
プレスミン公国軍も把握していた。
プレスミン軍ナイトメア兵団団長モーリック・ドルグデン侯爵は
遠くに見えた飛行物体を目視して一目でペガサスと判別していた。
「ほう、大蛙子爵が動いたか。」
『大蛙』とは泥臭い戦いばかりしてきたフィガロに
つけられたあだ名である。
「我が国の至宝ラブリーサンシャインを
持ち逃げされて、なおかつ使ってもらえてないと
嘆いていた我が王は落胆しきりだったな。
最近、フィガロに返還交渉したらしいが
また戦場でラブリーサンシャインを見る日が来ようとはな。」
ラブリーサンシャインに騎乗したエルビーン王と
戦場を駆け抜けた日々を思い出しモーリックは感慨深げであった。
モーリックの側で馬上に居並ぶ副団長ビリエが口を開く。
「モーリック団長、ラブリーサンシャインは
すでに売却されたという噂はデマで良かったですな。」
「だな。
フィガロの事だからその可能性は否定できんかった。
フィガロに持ち逃げされたとはいえ
ラブリーサンシャインは
我が国の栄光の象徴であり
共に戦場を駆けた我らの戦友でもある。
見殺しになど出来はしない。
そういえば、フィガロは
ラブリーサンシャインを乗りこなせなかったはず
ラブリーサンシャインが背中を任せるほど騎士が
フィガロの配下におるとはのう。
その武勇を近くで見たい。
フィガロの援軍など気乗りはしないが敵軍の近くに押し出すぞ。」
「は!全軍に急速前進の指示出しまする。」
ナイトメア兵団は急速にエトミア公国第一軍に接近し始めた。
ナイトメア兵団接近の報告を受けたエトミア第一軍は
西側に第二軍からの増援の白聖虎騎兵2000を配置した。
エトミア公国軍は作戦上、ギネタール攻略に
大規模な野戦を想定しておらず
エトミア公国ギネタール侵攻軍は
この2000しか白聖虎騎兵を率いていなかった。
白聖虎は白毛の虎であり聖獣種である。
白聖虎は機動力はユニコーンに遠く劣るものの
攻撃力、防御力はユニコーンを遥かに凌ぐ。
プレスミン軍の黒きユニコーンは『最速の矛』に例えられ
エトミア軍の白聖虎は『最強の剣盾』と言われて恐れられた。
エトミア公国軍第一軍は
その最強の剣盾をナイトメア兵団へ対峙させて
プレスミンの黒き最速の矛への防御を固めた。
ラックの後方の市街地から
フィガロが率いるギネタール本軍1000が現れた。
ラックはギネタール本軍と合流した。
フィガロが馬でラックに駆け寄った。
「ラック、ご苦労。
敵は攻撃しては、こんかったようやな。」
「ええ。まったく、拍子抜けしました。
まぁ、僕一人を攻撃してもあまり意味はないですしね。」
「しかし、お前は最高の働きをしたぞ。」
「え。なにしましたっけ?」
「プレスミン軍をやる気にさせた。
見ろ。ナイトメア兵団の移動速度が格段に上がったわ。」
「どういうことですか?」
「う~ん。正確に言えば
ラブリーサンシャインの功績とも言えるが
そのペガサスはプレスミン公国の生ける国宝。
それが一騎で現れたら、プレスミン軍は
見捨てたりはできまいな。」
「はぁ、領主様、失礼な事を言うようですが
やり方が少し汚いような気がしました。」
「もぅ!お前ってそういう事言うやろ。
戦争って勝たないと意味ないって知ってるか?」
「知りません。
俺って正々堂々と勝ちに行きたいタイプですので。」
「もう知らん!
お前ってエルビーン王と馬が合いそうやな。
まぁええわ。まだ、わしらは動かんぞ。
機が来たら、わしが号令して全軍で敵軍に突撃をかける。
そうしたらお前は正々堂々と戦ってくれたらええ。」
「わかりました。
では、俺は馬を普通の馬に替えてもらっていいですか?」
「バカモン!
お前、わしの話を聞いてたか?
お前がペガサスに乗って戦うからプレスミン軍は頑張るの!
もう、本当にお前って自分の事しか考えへんとこあるよな。」
「そうですかぁ。残念です。」
ラックはガッカリして肩を落とした。
西にプレスミン軍が接近し
東南にギネタール軍が布陣した。
それでもエトミア公国軍第一軍は動かない。
しかし、決戦の時は静かに迫っていた。
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