正門
城内正門前。
フィガロとマーチスが話をしていた。
「総大将が討たれたら負けですのに
総大将のフィガロ様が
自ら城を討って出なければなりませんか。」
マーチスは不安気な様子でフィガロに言った。
「しゃ~ないやろ。
援軍が来たって言っても
援軍も公式的にはうちとは敵対勢力や。
しかも、無料で借りた援軍や。
わしらが本気を示さんかったら
援軍の大将は戦わずに
軍を撤退させてもこっちは文句を言えん立場やろ。」
「我軍の精鋭の主力軍は城内にはいません。
寡兵でしかも弱兵で野戦を戦うなど無謀としか。」
「ふん。
本気で戦う必要などはない。
戦うフリを全力でするんじゃ。
それがこの戦を勝ちに導くんや。
わしの生涯一度きりの大博打に
命をかけんでどうする。
わしらが前線でのらりくらりしとったら
別働軍を指揮する二人の息子が
ええ塩梅にうまいことやってくれるやろ。」
「そうですな。
きっとうまくいきましょう。」
「マーチス。
マリアはいくつになる。」
「今年、14になりました。」
「子のいないお前に兄の娘マリアを
養女にして婿を取らせて
デスト家を継がせるというわしの計画は
うまくいきそうにないかもしれんのぉ。」
「ははは。
私も娘が猟師の息子と結婚したいなどと
言うとは思いませんでした。」
「ふふふ。
無理やり誰かと結婚をさせられない為に
騎士の真似事を始めた時には
開いた口が塞がらんかったわ。」
「私もです。」
「ラックを家臣に加えることはできん。
あれは魔物の類だとわしは直感的に感じておる。
この土地の言い伝えのあの魔物だとすれば
のちのち我が家に災いしかもたらさん。」
「その魔物の力を利用されようとしている方の
言葉とは思えませんな。」
「ふん。
わしなら使いこなせる自信があるんじゃい!
しかし、息子らには絶対に使いこなせんじゃろ。
もうすぐ平和な時代が来る。
そうなれば魔物の力など不要じゃ。
この戦に勝って
ラックがマリアを欲しいといえばくれてやる。
冒険者の嫁ならいい暮らしもできるやろ。」
「フィガロ様は
マリアの親である私の立場は無視するのですね。」
「お前はラックにマリアを渡したくないか?」
「親は娘の幸せのみを祈るのみです。
ラックがマリアが幸せにしてくれると約束するなら
私が何か言うことでもありません。」
「わしも変わり者やが、お前も相当の変わり者やな。
「主君に似たのでしょうな。」
「よういうわ!
あはははははははは!!」
ラックが兵士と連れ立って正門前に到着した。
ラックの金色の鎧姿に周囲の兵士たちは驚きでどよめく。
ラックは兵士の反応に恥ずかしい気持ちを抑えながら
フィガロの前で跪いた。
「領主様。
お呼びだと聞いて参上いたしました。」
「おお!英雄ラック殿のお出ましか。
もうすぐしたらこの城から出陣してもらうで。」
「わかりました。」
「詳しい作戦は前もって話したとおりや。
城を出たら全力で平野まで一騎駆けしてくれ。」
「は!」
「平野に出たら用意した我軍の旗を
戦場で目立つように見せびらかすんやで。
ほんなら絶対にプレスミン軍が動くはずや。」
「了解しました。」
「事前にも言ったけど
絶対にファルミット将軍は殺したらあかんで。
うっかりとかでも絶対にあかん。
わしらの軍が合流するまで
城の方角を背にして
お前自身が死なない程度に
防衛に専念してくれ。」
「失礼とは思いますが
大軍相手に私一人って無茶ぶりですね。」
「お前、いまそれを言うんか!
出来るって言うたやん!あれは嘘か。
嘘ついて背伸びしてもうたんか!言うみい!」
「いいえ、嘘ではありません。
私のような家臣でもない若輩者を信用して
このような大きな仕事を
任せるってすごいなぁと思いまして。」
「お前、わしを小馬鹿にしてんのか!
お前って、そういうとこあるよな。
その鎧を着てくれって頼んだ時も駄々こねまくって
わしに土下座までさせおって何様のつもりや!」
「着てます。」
「ん。なんやって?」
「死ぬほど恥ずかしいのに約束通り着てます!!!」
「あ。ありがとう。」
兵士がフィガロに駆け寄り跪いた。
「報告します。
城を包囲していた敵の大部隊が
平野の方に向かって撤退を始めました。」
フィガロは兵士に向かって頷いた。
「ラック、出番や!
思い切って行け!思い切ってやぞ!」
「は!
みんながびっくりするような活躍をしてきます。」
ラックは立ち上がった。
「ほんま、頼むで。
期待してるんやからな。ほんまに。」
そう言うとフィガロは正門に向かって歩きだす。
ラックもフィガロの後ろに付き従って正門へ歩きだした。
はじめまして。
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