包囲
ラックと女剣士テューネの
手合わせから6日後の昼前。
ダイモンド子爵の本城ギネタール城は
5000を超える大軍に包囲された。
ギネタール城を包囲するエトミア公国第一軍陣営。
天幕内で第一軍の諸将が居並ぶ。
「ギネタール城はなかなかの堅城。
城下町は道が狭く
大軍で一気に攻めるに難しい。
城の周囲には深い堀池もある。
力攻めではこちらの被害も甚大になろう。
敵には周辺国に味方はいない。
ゆえに援軍が来ることはない。
包囲してじっくり兵糧攻めで城を落としたい。」
第一軍の司令官ファルミット・ヘスウッダ侯爵は
諸将に自分の意見をそう述べた。
「司令官閣下。それでは王の機嫌を損ねましょう。」
第一軍第三大隊指揮官の男が発言した。
「そうです。
本陣で第一軍は
さぼっているなどと言われかねません!
ある程度の被害には目を瞑って、
まず、積極的な姿勢を見せて
我が王にアピールする事が先決でしょう。」
第一軍第四大隊指揮官がすかさず発言した。
「本国からの兵糧の補給も
あまり期待はできません。
戦続きで
本国の食糧の備蓄も心もとない。
行軍中にこの辺りの村から
食料を接収したが
大した量を確保する事は出来きんかった。
東の覇王の動向も気になりますし
悠長に兵糧攻めなどを
している時間はありますまい。」
第一軍第二大隊指揮官が暗い顔で発言した。
ファルミットは頭を抱えた。
「ダイモンド兵は強いぞ。
元は味方だったからよく知っている。
こちらの士気が低いと見れば
獰猛な牙で襲い掛かってくるぞ。
こちらの被害が大きければ
王からの叱責はまぬがれん。
フィガロ如き小勢力になぜ王は固執するんだ。
王は昔、フィガロに面と向かって
悪口を言われ続けたのを根に持っているのか。
確かに皆のいる前でフィガロに
堂々と罵詈雑言堂を浴びせられて
王はその事を根に持っていても
いた仕方ないのかもしれんが。
しかし、本来なら弱小勢力などを気にせずに
東の覇王との大戦のために
力を蓄えるべき時期のはずだろう。」
「実は。
司令官閣下はご存じないかもしれませんが
毎月、月初めにフィガロ子爵から王へ
悪口を綴った長文の書状が届けられており
王は書状の内容の全てに
目を通していらっしゃるとか。」
第一軍第一大隊指揮官が言いにくそうに述べた。
「王よ。
なにゆえに全部読んでしまわれるのか。
フィガロめ!
性格が悪すぎるぞ!
そのとばっちりでなぜ我らが
苦労させられねばならんのだ!」
ファルミットは、より一層頭を抱えた。
諸将から溜息が漏れた。
ファルミットは表情を硬くして
椅子から立ち上がった。
「もはや悩んでも仕方なし!
全軍で城への総攻撃の準備にかかれ!」
ファルミットは居並ぶ諸将に号令した。
「はは!」と諸将は起立して司令官に敬礼する。
諸将は天幕から出ると馬で自陣に戻っていった。
はじめまして。
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