女剣士
フィガロは
ギネタール城内の中庭にある訓練場に
家臣団とラックを引き連れて移動した。
大勢の兵士たちが訓練していたが
領主一行が姿を見せたことで手を止めた。
武装したマーチスの姿もあった。
訓練兵の指導にあたっている様子だった。
訓練兵の中にマリアの姿も見えた。
訓練場の中央に領主一行が立った。
「あたしの出番かい。」
女性の声が聞こえた。
訓練を指導していた女性騎士が
領主一行に歩み寄った。
体つきは豊満な女性の肉体だが
手足は筋肉質で腰は引き締まっていた。
フィガロは女性に頷いた。
「テューネ。
この少年と手合わせして頂きたい。」
「ほう、この少年が噂の英雄君か。」
テューネはラックを値踏みするように見つめる。
ラックは溜息をついた。
「俺はただの猟師の息子です。
ラックといいます。よろしく。」
ラックは右手を差し出した。
「テューネ・イストンだ。
君の実力に期待しているよ。」
テューネはラックと握手した。
フィガロがテューネの横に立つと
テューネの肩に手を添える。
「テューネは旅の冒険者でな。
火の魔法剣士と呼ばれる女剣士や。
実力はレベル45やったっけな。
B級冒険者や。
実力は相当なもんや。」
「冒険者!?」
ラックは驚いた表情を見せた。
「いいんですか?
冒険者が戦争に関わるって。
冒険者組合の規約違反じゃないんですか。」
「いいんだ。
戦争に直接参加するわけじゃない。
冒険者ギルドを通して
兵士の訓練指導の依頼を受けたから
ただ依頼を遂行しているだけだ。
君も知ってるだろうが
冒険者は人間を
一人殺せば、レベルが1つ下がる。
戦争に参加すればレベルなんて
あっと言う間に0になってしまうだろうさ。
そんなの割に合わなすぎる。」
テューネはあくまで
依頼に過ぎない事を強調した。
「なるほど。話はわかりました。」
ラックは本当のラックの
記憶を持っている。
冒険者に憧れたラックの知識で
ある程度、冒険者への理解がある。
冒険者はダンジョンで魔物を
狩って得た経験値を溜めてレベルを上げる。
レベルアップ毎にスターテスポイントを
1ポイント付与されて
ギルドカードを使って割り振る事が出来る。
ポイントの振り直しは出来ない。
レベルアップしたら
冒険者の特性に沿った能力の
スキルが解放されていく。
RPGゲームと同じように
レベルが上るほどにレベルアップに
必要な経験値は増えていく。
ラックは耐性上限10でMAXだが
冒険者の耐性というカテゴリーは
「毒」「麻痺」「睡眠」などの異常状態耐性。
「火」「水」「雷」「土」などの魔法耐性。
「衝撃」「打撃」「刺突」などの物理耐性など
細かく項目が分かれており、それぞれの上限は100。
冒険者は例外を除きレベル100までが上限なので
レベルアップで得たポイントを全部振ったとしても
1種類の耐性をMAXにすることしかできない。
ラックは全耐性を
わずか10ポイントでカンストしたという事になる。
ラックは冒険者とは理の
違ったルールの中で能力強化をしているのだろう。
ラックは少し考える。
(若いのにレベル45とは相当な努力家だな。
レベル45という事は
スターテスポイントを45持ってるわけだ。
『火の魔法剣士』
その異名から察するに
攻撃力と火の魔法適正に
ポイントを振っているのかな。
俺はホサ村の戦闘のあと
殺した兵士の死体の上に浮かぶ魂の玉を
全て吸収したら71ポイント集まった。
視界の画面に『魔法適正』『領域吸魂』って
項目も出てきたんで上限10ポイントを
どちらも全振りした。
攻撃力に40ポイント振って合計80。
防御力に11ポイント振って合計40。
テューネさんが攻撃力に全振りしていれば
魔法や武器や防具の補正次第で
俺の防御力を上回って十分ダメージを
与える事は出来るが、まぁ、どうだろうか。)
「では、ラック、そろそろ始めるか。」
テューネはラックと間合いを取る。
「お手柔らかにお願いします。」
ラックは素手のまま半身に構えた。
観衆の中でマリアは心配そうに
ラックを見つめていた。
はじめまして。
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