29話 輝きと苦悩(彩皇学園夏祭り潜入編)
潜入じゃないがな。
7月31日夕方。
一緒に行くのは気が引けるので学校を出て徒歩15分ほどの駅に二人で集まった。この駅から電車で10分ほど、さらに徒歩で5分歩けば着く。
切符を買ってホームで電車を待つ。
「英哲君。」
後島さんが話し掛けてくる。
「最近、皆に何かを隠していない?」
「へ?」
皆に隠していることはない。あの手紙のことでずっと思い詰めていただけだ。ただそれのせいで寝不足だが。
「何か大変なことを一人で勝手に背負っているような・・・何かあったの?」
かなり鋭い。
「大丈夫。ちょっと勉強で寝不足なだけ。特にたいしたことないよ。」
「そうならいいけど・・・何かあったらすぐにいってね。」
納得してくれた。この件に関しては自分が一人で決着をつける。関係ない人を巻き込むの気はさらさらない。
アナウンスによるとそろそろ電車が到着するようだ。
電車から降りるともう学校が見える。近い。っていうかあの建物でかいな。
大藤よりでかい。なんつー広さだ。校門には警備員が3人いる。しかし3人とも寝ている。大丈夫か・・・
さて、彩皇学園は人が多いわりに道が広いのでわりとゆっくり歩ける。
矢倉に人が集まっている。っていうかわざわざ矢倉作るっておかしいだろ・・・まあそれはいい。何のイベントがあるのだろう。チラシが電柱に貼ってある。
夏の決闘祭!!参加者は・・・
うん。うん。いかないでおこう。危険な香りがプンプンする。それに後島さんがこんなの好きとは思わない。うん。
「お〜い英哲〜久しぶりやないか〜」
右から声がする。あの声は多分・・・
「英哲数ヶ月ぶりやないか〜」
「やっぱりお前か。」
こいつの名前は不知火影人。小学校からの親友というゆり悪友。そして、小学校のころ自分とバッテリーを組んでいた。ものすごいうまい。しかし彼は極道の長の息子。自分が進んだシニアには入団を断られてしまった。しかたないことなんだろうか。彼自身はものすごい人情味のあるいい子。
「なんだお前は制服姿で。またケンカでもしてきたのか?」
性格は優しいし、他人が嫌がる仕事でも進んでやるようなタイプしかし少々ケンカっ早いところがある。
「まだ高校にはいって一回もしてねえよ。ただの部活の帰りだ。」
「野球部?メールもよこさないから全然わからねえじゃないか。」
「当然野球部。メールなんか来てないぞ。」
アドレス変更したか間違えたのを教えられたかのどっちかだな。
「まあそんなことはいいや。それよりそこの女の子は彼女?」
「違うよ!!」
「また強く否定するところが」
「黙れ。部活帰りならグローブかミットはあるな?」
「グローブ1個ミット1個。ちょっとそこのグラウンドを借りるか。」
「そうやな。」
そして夕方のキャッチボールが始まる・・・
ちなみに不知火はこっちのキャラで向こうの小説ではないです。悪しからず。