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異世界からのリベリオン  作者: 言乃 葉
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プロローグ

俺の名は児島千暁(こじまちあき)。女みたいな名前だが、男だ。


突然だが俺は今、空を飛んでいる。いや、吹っ飛んでいる。


空を飛べる超能力者というわけではないし、羽が生えているわけでもない。


吹っ飛んでいると表現したのはつまり、自分の意志で飛んでいるわけではないということだ。




俺はコンビニで買い物を済ませた後、家に帰るつもりだった。


・・・が、どうやらトラックに轢かれてしまったらしい。


事故にあったときの話でよく、世界がスローモーションになったなんていうが、


今の俺はまさにそんな状態なのだろう。


・・・なんて冷静に考えてみたものの、かなりの違和感がある。


普通こういうのって、事故にあう瞬間がスローモーションになるんじゃないのか?


俺の感覚では、轢かれる瞬間はまさに一瞬で、轢かれてからスローモーションになっている。


それこそ、スローモーションになってから轢かれたことに気づいたほどだ。


痛みを全く感じていないし、本当に事故にあったのか?とさえ思う。


ただ、頭の中は冷静ではっきりしているが、身体は違うみたいだ。


指先ひとつ動かすことができない。瞬きすらもだ。




おそらくこのままいけば、地面に叩きつけられることになるのだろう。


いや、もしかしたら今俺が見ているこの状況は全部夢で、現実にはすでに病院に運ばれて生死の境をさまよっているのかもしれない。




あぁ・・・そうか。まったく実感が湧かなかったが、今の状況がなんにせよ、俺は死ぬのかもしれないわけだ。




なんとも平凡な人生だった。特別勉強や運動ができたわけでもなく、地元で有名な不良だったわけでもない。


かといって地味で目立たない暗いキャラで、まったくモテなかったというほどでない。一応彼女がいたこともある。


友達が多いタイプではなかったが、とても仲のいい友達が2人いた。


あいつらは俺が死んだと知ったら泣いてくれるかな。


自分の生きてきた18年間を作文にしてみたら、原稿用紙1,2枚で足りてしまいそうだな。


・・・と、そんな感じのことをぐるぐると考えていたときにふと異変に気付いた。




――完全に時間が止まっている。




さっきまではスローではあったが、間違いなく時間は流れていた。


吹っ飛ばされた自分の見ている景色がゆっくりと流れていたからだ。


だが、今は完全に止まっている。


最初に違和感を感じた時もそうだが、よくよく考えるとおかしいことだらけだ。


事故にあったことは間違いない。だが、今の状況は本当に事故のせいなのか?


事故の瞬間から5分、いや10分ほど経っている気がする。


あまりにも長すぎるのだ。


もちろんこんな経験は初めてのことだが、スローモーションなんていっても、せいぜい一瞬が10秒ほどに感じたとかその程度のものだろう。


あきらかな異変に気付きながらも、今の俺にはどうすることもできない。




もし、永遠にこのままなら――




そこまで考えて怖くなり、俺は考えることをやめた。




止まってしまった世界で今の俺の目に映るのは、とても綺麗な青い空。


そういえば、今日はとてもいい天気だった。


視界の端に映る民家や、歩道に植えられた木々の緑と空の青、白い雲がとても美しい。




……生きてる時にこんなこと、考えたこともなかったな。


人は死を目の前にして初めて、世界の美しさを知ることになるのかもしれない。




いやいやいや、どうした俺。まるで詩人じゃないか。


俺はこんなキャラじゃない。ついに頭までおかしくなってしまったのか?




死にたくない。今更実感が湧いてきた。




視界が歪んで見える。




…俺は泣いているのか?いや、止まってしまったこの世界では、涙すら流れない。




本当に歪んでいる。さっきまで見えていた景色が、ぐるぐると渦を巻くように歪んでいく。


景色が溶け合い、徐々に黒くなっていく。




これは……。何なんだ?


……一体どうなって――





俺の意識は、そこで途切れてしまった。

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