表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
96/102

観察95:温かさを

「? 誰もいないのか?」

雪奈の家にきたオレは呼び出しても反応が一つも返ってこないのに疑問を覚えた。

「……開いてはいるな」

少し考え、オレは勝手に入る事にした。親が死に、後見人には紘輔さんがなっていた。実の叔父でもあるし、そう問題はないだろう。もちろん心情的な抵抗はあるが。

「……しかし、本当に静かだ」

中へと入り、オレはそうもらした。



『ひっく……すんっ……』

一つの扉の前で啜り泣くような声がした。

「……雪奈? いるのか?」

そこは雪奈家の部屋だった。

『……………………』

オレが声をかけた後、啜り泣くような声が止まった。

「……いないのか?」

百パーセントいると確信しながらオレはそんな事を言う。

『……………………』

返事はなかった。オレは気にせず伝えたい事を言うことにした。

「オレがいるから」

聞いているだろうか? 雪奈は。もしかすると耳をふさいでいるかもしれない。

「頼りないかもしれないけど……」

そう考えながらオレは続けた。

「雪奈にはオレがいる」

小さな子どもだろうけど。それでも自分よりも幼い子の傍にいて安心させることくらいできるばずだ。

「そう思ってくれるなら……オレが支えになると思ってくれるなら……」

反応は何もなかった。

「……出てきてくれないか?」

『…………………………』

やはり返事はない。

「ダメ……………か」

ダメなのかと諦めそうになる。

「……もし、オレが支えになると思うなら、いつでもいい。夕方、海に来てくれ」

それでも、海でのこころとのやり取りを思いだしたオレはそう言っていた。あの温もりを雪奈にも感じさせたい。そう願えた。そうすることで自分も救われるんじゃないかと感じた。

「………お前が来るまで待ってる」

そう言ってドアにメモをはさみ、オレはその場を離れた。



私はずっと耳をふさいで声をひそめていた。お兄ちゃんには居ることがばれてるだろうけど、何も聞きたくなかった。

「……これは?」

気づくとドアに何かが書かれた紙があった。お兄ちゃんが残したメモかなと手にとる。

『夕方に海で。待っている』とそれだけ書かれていた。

「………どうしよう?」

私は悩む。はっきり言って、今、お兄ちゃんには会いたくない。

「……………行かなくてもいい……よね」

誰かに会うことが今の私は怖い。親しい……親しかった人に会うのは特に。お兄ちゃんに否定されてしまえば、私がどうなるか分からない。

「………怖いよ」

だから私は行かないと決めた。

「助けてよ………お兄ちゃん………」

そう決めたのに、私は矛盾することをこぼしていた。


ログインせずとも感想書き込めるようにしました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ