表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
91/102

観察90:条件

「……なんだ? ここ」

こころに連れられやってきた場所で、オレはつぶやく。

「どこって? どう見ても遊園地じゃない」

こころは何言っての? という感じだ。いや、確かにどこからどう見ても遊園地なんだけどさ。

「なんでここなんだよ?」

「だって、春休みに三人で来たんでしょ? あたしだけ行ってないって不公平じゃない」

「話し合いはどうした」

「まだ日は高いんだから」

そう言って、こころはオレの手をとり歩き始める。

「………まぁ、いいか」

言いたいことはいろいろある。でも、たまにはこころに付き合って遊ぶのもいいかもしれない。

「それじゃ俊行、まずはジェットコースターよ」

「本当に姉妹みたいだよな……」

オレはおかしくなって苦笑した。



「ん~~……遊んだ遊んだ」

「……本当に姉妹みたいだな」

ジェットコースター何回連続で乗ったか分からない……。

「でも、アタシはお化けは怖くないわよ?」

というか、こころに怖いものなんてあるのか?

「それより、いい加減満喫しただろ?」

「そうね。じゃ、観覧車にでも乗りましょうか」

「そうだな」

……そこで、本題だ。



「さてと……どこまで話したっけ?」

観覧車の中。こころは入ってすぐに話をきりだす。

「瑞菜の話」

「そうだったわね。瑞菜さんが雪奈に与えた影響。一つは独占欲の刺激。他には……って、とこだったわね」

「ああ。それで、お前が考える他の影響は?」

たぶんだけど、オレとこころが考えてることは同じだ。ただでさえ、オレとこころはどこか似てるし、それが雪奈の事ともなると、ほぼブレはない。

「俊行が瑞奈さんと付き合ったことで、雪奈は感じたはずよ。俊行が自分の目の前からいなくなる可能性を」

オレは、瑞菜と付き合ったからといって、雪奈の事をほったらかしにするなんてことはない。それでも、雪奈がそう感じるのは別の話だ。オレは雪奈の告白を断ったのに、瑞菜の想いを受け入れた。それは雪奈にとって、想像以上にショックだったのだろう。

「まぁ、瑞菜さんが与えた影響はたくさんあるし、言うまでもないことがほとんどだからここまでにして、次はアタシね」

「……こころの与えた影響ね」

それこそ言うまでもないな。

「オレを盲信させなくしたことだろ?」

「そういうこと。改めて冷静に海原俊行という人間を観察した。その上で雪奈はまた俊行を信頼した。これは本当に大きいわね」

……本当に言うまでもないよな。

「で? 今のオレの行動はどんな意味があるんだ? 雪奈にとって」

「分からなくなったのよ。雪奈が俊行の気持ちを。……感じれなくなったって言った方がいいかな」

「………やっぱり分かるものなのか?」

「頭では理解できなくても感じるものよ。近くにいれば」

つまりは、オレが雪奈のことを好きと言うことを。

「だから近くにいれば、雪奈は安心した。雪奈はそれだけで満足で、それ以上を心から求めなかった。芽生えた恋心が花を咲かせる気がなかった」

「……近くにいればか」

「そういうこと。条件はこれ以上ないくらいにそろったわね」

「………はぁ」

「ま、恋愛なんて不確定な要素がたくさんあるしね。雪奈が本当に俊行の事好きになるかは知らないけど」

ただ、とこころは言い、

「少なくとも、あの子が俊行を何よりも求めてるのは確かよ」

「……そうだな」

あの日から、雪奈はずっとオレを家族として求めてきた。それが今、想い人としても求めるかもしれないというだけだ。

「あら? もう下につくみたいね。景色見てないからもう一回乗るわよ?」

「はいはい。付き合いますよ」

オレも、景色を見ながら考えたいからな。



景色はあかね色に染まり、空は夕闇に包まれていくなか、オレは初めて雪奈に会った時の事を思い出していた。

俊行が雪奈の告白に応えなかったのは、幸せにする自信がなかったのと、雪奈の想いが恋愛とは言えないものだったから。さて、それが恋になったとしたら……?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ