観察88:気にしたら負け
「やばいわね……もうすぐで雪奈が来るわ」
時刻は早朝と言っていい時間。雪奈が来るのはもうすぐだろう。
「……どうすんだよ? この話はもう終わりか?」
オレは雪奈に会う訳にはいかないからな。
「ん〜……じゃあ行きましょうか」
「どこにだよ?」
「ホテル」
「…………………」
こいつはふざけてるのか?
「言っとくけど、ただのホテルだからね? アタシ達、徹夜してるから寝ようと思ってるだけよ?」
「……ならいいけど。でも、ホテルってこんな時間から泊まれたっけ?」
「大丈夫よ。受付が全自動の24時間体制だから」
「………そこ本当にただのホテルか?」
激しく怪しい。
「そんなことより、雪奈には書き置きしないとね」
「何て書くつもりだ?」
オレは激しく嫌な予感がしながら聞く。
「俊行とデート行きます。ハート。 byこころ」
……なんだよ? ハートって。
「じゃあ、早く着替えて行きましょうか」
そう言って、こころは颯爽とオレの部屋から出ていった。
ちなみに、書き置きの手紙は、こころはほぼ宣言通りに書いていた。
「う〜ん……よく寝たな」
オレは伸びをしながらつぶやく。
「ベッドが深々だったでしょ?」
「そうだな。気持ちよかった。……だけど」
「だけど?」
「何でお前ははそんなこと知ってるんだ?」
「んふふ……何でだと思う?」
いたずらな笑みをしながらこころは言う。
「……いい。知らなくていい気がする」
「別に俊行の家に転がり込む前に一度使っただけなんだけどね」
……だったら最初からそう言え。
「それで? これからドコに行くんだ?」
「アメリカ」
「一人で行け」
「良いじゃない。夏休みなんだから」
「オレにはここでやることがあるんだよ」
大切な事が。
「……やっぱり、雪奈を避けてただけじゃないのね」
「そりゃな」
アイツの為に、オレはやれるだけの事をしないといけない。
「ていう訳で、ちゃんと妹談義をしっかりしようぜ」
「まぁ、我が家の妹様の事だしね」
「んじゃ、行くか」
「そうね」
そしてオレ達は歩き始めた。
「ところで俊行。どこ行くか分かってるの?」
「……さっさと言えよ」
オレは呆れ気味に呟いた。