観察85:今のままで
「夏休み………か」
お兄ちゃんが私を避けるようになって、それなりの時間が過ぎた。あれから本当に数えるくらいしかお兄ちゃんと話してない。
「……やっぱりここは拉致監禁するしか」
「……物騒な事はやめなさい。捕まるわよ?」
「むぅ……」
私の名案をお姉ちゃんは却下する。
「それにアタシだって俊行とはまともに会う時間は減ってるわよ」
「ふぇ? なんで?」
「朝は雪奈が避けられてるから瑞菜さんと登校してるし、放課後も何か用事があるのかすぐに居なくなるし……」
「ふ〜ん……お兄ちゃん何をしてるのかな?」
「たぶん好きな子の為に頑張ってるんじゃないかな」
「………お兄ちゃんて好きな人いるんだ」
「ええ。大好きな子がいるわね」
「……ショックなんだよ」
やっぱり昔の人なのかな?
「まぁアレね。頑張りなさい、雪奈」
「むぅ……言われなくても分かってるんだよ」
頑張らないと、お兄ちゃんが私の前から居なくなるような気がするし。
「ねぇ、雪奈。もし俊行の好きな人が私だったらどうする?」
「お兄ちゃんがお姉ちゃんの事が好きなの? それは……」
「やっぱり許せない?」
「ううん。祝福……するかな」
大好きな二人が、私の大切な人達が幸せになれるなら。
「それに……二人が一緒になるなら、私も一緒にいれるから」
うん。それはきっと素敵な日々。
「そっか……そうだったらみんな幸せになれるのね」
「でも、何でそんなことを?」
「俊行は不器用だから」
「………はい?」
質問の答えになってない。
「ねぇ雪奈。俊行の事を信じて……そして自分の想いを信じなさい」
「どういう……意味?」
「雪奈は今の雪奈が一番可愛いって事よ」
「? ? ますます分からないよ」
「それは、分からないように言ってるからね」
「むぅ……お姉ちゃんの意地悪」
「クスクス……大丈夫よ。心配しなくても。アタシは雪奈の味方なんだから」
「むぅ……」
「そこでむくれないでよ……」
とりあえず私はむくれ続けるのだった。