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観察84:なによりも

「……それが裏切ったって事ですか?」

全ての真相を聞き、オレは辛うじてそう聞く。

「正確には裏切ったとは言わないのかな? だってあの人は最初から騙してたんだから」

心奈さんはあくまでも笑顔だ。ただ、真相を聞いた今、その笑顔が痛々しくて仕方ない。

「……そう言えば調べものをしてるって夏から聞きましたけど、何を?」

オレは少しでも雰囲気を返るように別の話題を降る。

「精神の安定の仕方とかそういうのをね。今でもあの人と話すとしたら自分が自分であれるか自信がないから」

「……そんな人と会う必要なんてあるんですか?」

「取り戻すために」

そう言う心奈さんの顔は間違いなく母親の顔だった。

「……心奈さんは母親なんですね」

「ええ」

「……だったら何で雪奈と会おうとしないんですか?」

「っ………それは……」

「雪奈と病気は関係ないんですよね?」

「……ええ」

「だったら………」

「……資格ないのよ」

「資格……資格ってなんですか?」

「俊行君だって覚えているでしょ? 私があの子になんて言ったか」

あの時の事か……。確かに引け目を感じるかもしれない。それは分かる。

「……だったらなんだって言うんですか?」

「ぇ………?」

確かに心奈さんの気持ちは分かる。だが、だからといって雪奈と会おうとしない、その意味が分からない。

「確かに雪奈はあの時の心奈さんの言葉を引きずってます。だから心奈さんと会う事も怖がってる」

だけど、ずっと雪奈の事を見ていれば分かる。

「でも……それ以上に雪奈は寂しがってる。心奈さんに……実の母親に会いたがっているんですよ?」

雪奈は、オレやこころだけ居れば幸せだって言った。でもそんなの嘘だ。友達だって欲しいだろうし、何よりも母親の温かさが必要なはずだ。オレみたいに失ったなら仕方ない。でも……雪奈にはここにその温かさがあるんだ。

「……私は」

「いきなり会ってなんて事はいいません。雪奈だって怖がってるから。けど……雪奈が心奈さんに会いたいと言った時は会ってあげて下さい」

「そうね……あの子が望むなら」

オレはそれだけ聞いて深くうなずく。

「それじゃあオレはこれで」

話はすんだ。オレは扉に手をかける。

「俊行君」

「はい?」

後ろからの声にオレは顔だけ振り向く。

「雪奈のことよろしくね」

それは始まりと同じ言葉。

「当然ですよ」

オレはそれだけ言ってオレはその場を離れた。

(オレはアイツの兄だから)

そしてなにより……。

(……雪奈の事が好きだから)


真相はこの物語の中では、全ては話されません。これは雪奈の為の物語だから。明かされるのはまた俊行が過ごす別の物語で。

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