表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
83/102

観察82:分からない理由

「うぅ……お兄ちゃんに会いたい」

「そのセリフ……何度目かしら」

だって会いたいんだもん。

「ていうか本当に雪奈って俊行の事が好きよね」

「そんなの当然だよ」

「なんでよ?」

「だって私のアイデンティティーだもん」

「……否定出来ないわね」

お兄ちゃんが好きじゃない私なんて私じゃない。

「でも……なんで? どうしてそんなに好きなの?」

お兄ちゃんが好きな理由……か。

「ん〜……どうしてだろう?」

そう言われてみるとよくわからないなぁー。

「はぁ……まぁ確かに俊行のいい所を言うのは雪奈は大変かもね」

「? どうして?」

「アタシや瑞菜さんと違って、雪奈はずっと俊行の傍に居たからね。いい所も悪い所も全部それが当然になってるのよ」

なるほど……。

「それに雪奈は友達とかほとんどいないから俊行と他の男を比べる事もないだろうからね」

「な、納得なんだよ」

確かにお姉ちゃんの言う通りかもしれない。

「……じゃあ、お姉ちゃんから見て、お兄ちゃんのいい所ってどこ?」

「俊行のいい所ね……大切な誰かの為にはその子を傷つける事も躊躇わない強さ……かな」

言い換えれば不器用なだけだけどね、とお姉ちゃんは笑う。その笑顔はどこか嬉しそうで、誇らしそうだった。

「……お姉ちゃんは――」

私は声をだそうとして、でも途中で詰まる。

「ん? どうしたの?」

(――お兄ちゃんの事が好きなの?)

その言葉がでない。

「……アタシが俊行の事が好きじゃないか聞きたいの?」

「っ……!?」

なんで……。

「どうして分かるの?」

「姉妹だからね」

一言。当然のようにお姉ちゃんは言う。

「だから大丈夫よ。雪奈から俊行を奪ったりしないから」

そう言ってお姉ちゃんは綺麗に笑う。

「うん……ありがとう。でも――」

「でも?」

「……なんでもない」

(――それって質問の答えになってない)

私の思いに気づいているのかいないのか、お姉ちゃんは何も言わなかった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ