観察81:後悔の笑み
「それで、話の続きなんだけどね、二人の子どもの親権は私とあの人に分けられたの。雪奈は私が。もう一人、雪奈の姉はあの人に」
雪奈に姉ね……。正直、雪奈の姉と聞いたらこころしか思い浮かばない。
「何か問題があるんですか? ここまでは別に普通だと思いますけど」
離婚の理由が少し納得しないけど。
「私も何も問題がないと思ってたわ。7年前のあの日までは」
7年前……父さん達が事故で亡くなった時くらいの頃か。
「何が……あったんですか?」
たぶんこれが核心に迫る事だ。
「あの頃、私に何があったか覚えてる?」
「覚えてますよ。……簡単に忘れるような事じゃないですから」
「そうね。もしかしたらあなた達もショックだったかもね」
それに……あの日は父さん達が死んだ日だった。
「私は紘輔君との子どもを出産したけど、その子は生まれてすぐに亡くなったの」
「あの頃はそれどころじゃなかったし、まだ子どもでよくわからなかったんですけど……流産だったんですか?」
「ううん。出産予定日よりほんの少し早いくらいだった」
「先天性の病気だったんですかね?」
「分からない……私はあの子を抱く事すら出来なかったから」
「それと離婚した事と何か関係あるんですか?」
子どもが死んだ事。悲しい事だが、だからと言って離婚した事とは関係ない。
「いいえ。ただ……その日に知ったの。あの人の思惑を」
「……その日に何かあったんですか?」
「電話が来たの……別れたあの人から」
「どんな内容だったんですか……?」
オレの質問に心奈さんは微笑む。だけどその笑顔を形作っているのは……。
(後悔……か?)
オレは改めて覚悟を決めて心奈さんの話を待った。