観察72:馬鹿
「というわけで……雪奈、誕生日おめでとう!」
「おめでとう雪奈ちゃん」
家に帰り着き、オレ達がリビングに入ったところで、クラッカーの音と一緒に雪奈に祝いの言葉がかけられる。
「ぇ?……ぇと……ぇ?」
雪奈はいきなりの事に目を丸くしている。
「とりあえずありがとうって言っとけ」
「ぁ……うん。ありがとうお姉ちゃん。昔の人」
「どういたしまして」
「あはは……未だに私って昔の人なんだ……」
いや、落ち込むなよ瑞菜。気持ちは分かるけど今更だろ。
「でも驚いたよ……」
まぁ、それが目的だからな。
「とりあえず、サプライズパーティーは成功かな?」
「普通にね」
「あはは……大成功ではないんだね」
だって雪奈の反応が微妙だし。
「とにかく……後は思いっきり楽しむぞ」
これが最後だから。オレは、オレ達は夜遅くまで楽しんだ。
「……ねぇ、俊行」
「なんだよ? こころ」
宴も終わり、雪奈も瑞菜も帰ったころ。片付けも終わり、一段落ついた所で、こころに話しかけられた。
「なんで、あんなプレゼントを雪奈にしたの?」
「なんだよ? 今更。おかしかったか?」
「今までの俊行の雪奈に対する態度を見てたらね」
「まぁ……そうだな」
「どうしたの? 雪奈の気持ちを受け入れる事にしたの?」
「違う。その逆だ」
「逆って……」
「明日からオレは雪奈から距離をおくって事だ」
「なっ……本気で言ってんの!?」
「本気だよ。ずっと前からそうしようと思ってた」
オレじゃ、雪奈を救う事はできない。幸せにはできない。今日、改めて実感した。
「だから、お前に雪奈の事を頼むよ」
あいつが一人にならないように。
「なんでよ……なんでそう言う事になるのよ?」
「なぁ、こころ。お前は雪奈の涙を見たことがあるのか?」
「涙?……あんた、雪奈が泣いてるとこ見たことあるの?」
「ああ」
「だったら、なんでそんな事に……」
「?……だから、オレじゃあいつを幸せにできないって、そう思ったんだよ」
「………はぁ。やっぱ、あんた馬鹿だわ」
「分かってるよ」
こころの言いたいことは。でも……。
「いいえ。全然分かってない」
「なんだよ……いったい……」
「まぁ、いいわ。俊行がそう言うなら。雪奈の事頼まれてあげる」
「ん……あぁ」
なんか、納得いかないけど。
「せいぜい、雪奈に王子様が現れるのを祈っとくことね」
「ああ。そうする」
あいつを幸せにしてくれるような、そんな奴が。
「はぁ………(なんで気付かないのかしら?)」
ため息の後、こころが何か呟いたが、オレには聞こえなかった。
起承転結の承が終わりました。後はクライマックスに向けて突っ走るだけです。