観察69:デートのお誘い
「という訳で雪奈。デートに行くぞ」
「…………ぇ?」
ある日の事。オレは雪奈をデートに誘った。
「なんだよ? 嫌なのか?」
だったら別に無理して行かなくてもいいけど。
「いやいや! 行くけど!………でも何でいきなり? いつもは私が誘ってもなんだかんだで断るのに……」
「お前さ……今日が何の日か覚えてるか?」
「ぇ?……うん。今日はお兄ちゃんの――」
「その事を覚えてて何で忘れたとか言わせないからな?」
「?……何のこと?」
本当に忘れてんのかよ。普通、同じ日の事は関連付けて覚えるもんだと思うんだが……。
「はぁ……今日はお前の誕生日だろ?」
「へ?………ぁ、そうか。そう言えばそうだね」
……まぁ、忘れたい日だろうけどな。
「とにかく、そういう訳だ。デートに行くぞ」
「うん。分かったけど………どこに行くの?」
「………そう言えば決めてなかった」
デートに行けば雪奈が喜びだろうと思って、具体的な事は何も考えてなかった。
「あはっ……お兄ちゃんってこういう所で抜けてるというか、可愛いというか」
「うるさいよ」
男に可愛いとか言うな。
「じゃあ、私が行きたい所でいいのかな?」
「いいけど……どこか行きたい所でもあるのか?」
「あるよ」
「ふ〜ん……どこだよ?」
「そこはついてからのお楽しみなんだよ」
「はぁ……まぁいいけど……」
雪奈が行きたいと言うのであれば。
「それで……さ……」
「ん? なんだ?」
「今日だけでいいから……」
「いいから?」
「私の恋人になってください。ごっこじゃなくて本当の」
「……………………」
「1日……1日だけでいいから………ダメ……かな?」
「はぁ………今日だけだからな?」
今日だけは。今日だけは特別だ。
「うん」
今日だけの恋人をつれ、オレは家を出た。
久しぶりに恥ずかしい二人。でもシリアス。