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観察6:待ち合わせ

「春休みだぁぁぁぁぁあ!!」

終業式も終わり、クラスで行われる最後のホームルームも終わったところで、永野が叫び声をあげた。

「お前さ……、これで最後なんだから少しは感慨深いものとか無いのか?」

「ない! 春休みを前にした俺にそんな殊勝な感情はない!」

「即物的だなぁ……」

ある意味尊敬するよ。

「よし!海原! 町に遊びに行くぞ!」

「行かない。以上」

「話を勝手に打ち切るな!」

「いや、少し時間も迫ってるし。どうせこれ以上お前と話すことないし」

「なんだよ。なんか先約があるのか?」

「あぁ。雪奈とちょっとな……」

確か、校門の前で待ち合わせだったな。時間はホームルームが終わり次第だったから急がないと。

「……まさかデートか?」

「……デート『ごっこ』だよ」

恋人ごっこの延長でやるんだからな。

「てめぇはギャルゲーの主人公か!?」

「したことないから分からんがたぶん違う」

だって別にゲームじゃないし。リセットもなければセーブ&ロードもないし。

「じゃあやっぱりあれか! リア充か!」

「だからリア充ってなんだよ?」

「くそぉ……リア充なんかリア充なんか……」

人の話本当に聞かないなぁ……。

「ヤンデレに氏なされてしまえぇぇぇぇぇええ!!」

そう言って永野はカバンも持たずに教室を飛び出して行った。

「……なんか永野の奴泣いてたな」

訳も分からないまま永野に同情するオレだった。



「もう! お兄ちゃんてば遅いよ!」

「悪い悪い。少しだけクラスにお別れをしてたんだ。一応今日で最後だからな」

嘘だけどな。明後日には教師の離任式もあるし。

「ぁ……そうだったんだ。ごめんね。怒ったりして」

本当にすまなそうに言う雪奈。こいつは疑うことを知らないんだろうか?

「嘘だよ」

「ぇ……?」

「本当は永野に捕まってただけだ。だから、遅れて本当に悪かった」

「ぅぅん……。やっぱり私がごめんなさいだよ。お友達は大切にしないと」

永野が友達かは保留にしといて、雪奈はいつも教室で一人というのを思い出した。

(馬鹿かオレは…………)

オレは何も考えずに一目散にここに来るべきだったんだ。雪奈が待ってるここに。だから……。

「やり直そう。雪奈」

「ぇ……お兄ちゃん?」

「待ち合わせをやり直そう。オレが来るところから。今度は走ってくるから」

「ぁ、あの? お兄ちゃん?」

「すぐに来るから待ってろ」

オレは走って校舎へと戻った。



「はぁ……ふぅ……悪い雪奈。遅れちまって」

息を切らしながらオレは雪奈に謝る。校舎から校門まだはそう長くはないが全力疾走すればそれなりに疲れた。

「ぇ……ん……。ぅぅん。私も今来たところだよ」

「そっか。よかった」

「………………………」

「………っぷ……」

「ふふっ」

「なにしてんだろうな? オレたち」

「なんだか本当の恋人同士みたいだね」

「そうだな」

オレも雪奈もこらえきれずに笑い合う。

「……行くか」

オレは雪奈の手をつかみ歩き出す。

「ぁ……手……」

「いやか?」

「ぅぅん。いやじゃない」

「それはよかった」

「それとね、ありがとう」

「なにがありがとうかわからないけど、どういたしまして」

「それからね……お兄ちゃん大好き」

オレはなにも言わず、少しだけ手を強く握った。

「……ん」

雪奈も握り返してくれた。



その後のオレたちは普通にウィンドウショッピングをして楽しんだ。別に雪奈が何かを欲しがることはなかったし、オレがプレゼントすることもなかった。

ただ……繋いだ手を離すことだけはなかった。

なんだこれ? こんな恥ずかしい小説書いたの誰ですか?

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