表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/102

観察65:欲しいもの

「なぁ雪奈」

ある日の夜。オレはリビングで死ぬほどゆったりしている雪奈の隣に座り、話しかける。

「な〜に〜おに〜ちゃ〜ん?」

……ゆったりしすぎじゃね?

「とりあえずアレだ。普通に座れ」

「むぅ……」

変な擬音語(擬態語?)を言いながらも雪奈は座り直す。

「それで? 何なのかな?」

「あ〜……うん。お前の好きな物って何だよ?」

「お兄ちゃん」

……即答だよ。

「もちろんお姉ちゃんも」

「……オレもこころも物じゃない」

「でも一番好きなのはお兄ちゃんとお姉ちゃんだよ?」

「……人以外で何かないのか?」

「好きな物?」

「ああ」

「う〜ん………ない」

「あ〜……やっぱりか」

半分は想像出来たんだがな。雪奈にとっては家族が全てで、他の事に目を向ける事はなかっただろうから。……見失わないために。

「じゃあ欲しい物とかないのか?」

「お兄ちゃん!」

……元気に即答だよ。

「残念ながらオレは売り切れ中だ。他には?」

「う〜ん………ない」

まぁ仕方ないんだけどな……。

「本当に何もないのか?」

「う〜ん………ぁ、一つだけある」

「何だ? それは?」

「お兄ちゃんを悩殺出来る服が欲しい」

「そんなものは存在しない」

「え〜……昨日お姉ちゃんのスーツ姿にドキドキしてたくせに」

「お前だってなんだか心ここに在らずって感じでこころの事を見てただろ」

「だってお姉ちゃん綺麗だったんだもん」

実際反則気味だよな。

「という訳でそれが欲しい」

「悩殺出来る服ねぇ……」

まぁ候補に入れておくか。

「でも……何でいきなりそんなことを?」

「気にするな。たまには雪奈と話したいと思っただけだ」

「本当に?」

「別に信じなくてもいいけどな」

信じられなくても当然だ。雪奈にしてきた事を思えば。

「むぅ……そこは『本当だ』って優しく言って欲しかったな」

でも雪奈は変わらなくて……。

「そうだな……本当だよ」

その変わらなさが愛しく感じた。


欲しいものと聞かれても意外に答えられないものです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ