観察59:瑞菜との関係
「………は?」
オレは瑞菜の言葉に戸惑い、聞き返す。
「別れようって……そう言ったんだよ」
それが意味する事はきっと一つしかなくて……。
「恋人じゃなくなりたいってこと……だよな?」
「うん」
瑞菜はずっと笑顔だ。だから瑞菜が何を考えているのか……それが分からない。
「……オレの事が嫌いになったのか?」
「あはは……違うよ。というよりも、どうして私がこういう事言うのか、とーくんが一番分かってるよね?」
「……雪奈のことか?」
「うん。それも理由の一つかな」
理由の一つ……という事は他にも理由があるという事だ。
「とーくんさ………最近、夜にこころさんと何をしてる?」
「っ…………!?」
それはつまり………。
「気づいて……たのか?」
「なんとなくね。今の反応で確信したけど」
墓穴を掘ったってことか……。
「でもなんとなくって………?」
「あはは……最近とーくんが妙に疲れぎみなとことか、たまにこころさんの歩き方がおかしいとかかな」
名探偵か?
「でも一番の理由はこころさんのとーくんへの態度が自然になったからかな。だから何かあったってのはすぐに気づいて、注意深くとーくん達の事を見るようになったから」
「……やっぱり瑞菜は瑞菜だよな」
隠し事なんて出来ない。
「別れる原因はオレの浮気か……仕方ないな」
1ヶ月で別れて、その理由がオレの浮気だってんだから情けない。
「別に浮気が原因じゃないよ?」
「じゃあ、どうして?」
浮気が原因じゃないならどうして別れる必要があるんだろう?
「あはは……とーくんが好きだから」
「………は?」
それは笑顔で言われて……やっと瑞菜の気持ちが見えた気がした。
「とーくんが好きだから……だから、とーくんに苦しんで欲しくないから」
「……苦しいのは瑞菜だろ?」
「あはは……確かに嫌だけど、こころさんとそういう関係があるのって……」
いつもの瑞菜の苦笑。それが何よりも優しく見えた。
「でも、とーくんもつらいよね。私と付き合ってたら」
……それは罪悪感の事を言っているんだろうか。
「だからだよ」
「そう………か」
オレはそれだけ答えて何も言えなくなった。瑞菜も何も言おうとしない。ただオレを優しく見つめている。
「そろそろ………帰るか」
オレの恋人だった人にオレはそう言う。
「そうだね」
そう言う瑞菜の笑顔は本当に優しくて、オレは目頭が熱くなった。
大切な幼なじみ。それが瑞菜との関係だ。
こころ、瑞菜ときました。次は決まってますね。