観察57:こころとの関係
「と……き……とし…き」
身体を揺さぶるのと一緒にこころの声が聞こえる。どうやらオレを起こそうとしているらしい。
「そろそろ起きないと……雪奈達が帰ってくるわよ」
「ん……もうそんな時間か?」
オレは身体を起こし部屋にある時計を確認する。3時。2、3時間もすれば帰ってくるだろう。
「とりあえずお粥。お昼食べてないでしょ?」
「そっか……あの後疲れてそのまま寝たのか」
思いっきり汗をかいて寝たからか、想像以上に体調がいい。風邪はもう大丈夫そうだ。
「……後始末大変だったからね」
「あはは……悪いな」
いつもは二人でするからな。シーツ替えたりフ○ブリーズしたり。
「……あの時以来だよね?」
「何がだよ?」
「アンタから迫ってきたの」
「……そうだな」
「……そういう事なの?」
「何がだよ?」
「あの時……今日。アンタはもしかして……」
「それ以上は言うな。どちらにしてもオレが最低なやつなのは変わらない」
だいたい矛盾しているんだ。こころの為にこころを傷つけるなんてのは。
「でも……」
「それに……どっちにせよ、お前は納得しないだろ? 納得するんだったら、あの時の一回で終わってたはずだ」
「……そうね」
「だからオレの考えなんて意味ないんだよ」
結局はこころが納得するかどうかなんだから。
「でも……アタシは俊行がアタシの事嫌いだからあんなことしたんだと思ってた」
「アホな事を言うな。言っただろ? オレはお前の事が大切だって」
「バカ………」
「誉め言葉として受け取っておく」
「でも………」
「……やっぱりまだ夜の会瀬は続けるのか?」
「何よ会瀬って………でもそうね。たぶんやめられないかな」
それは裏切り続けるという宣言。
「アタシはアタシに罰を与えないとアタシはアンタと対等でいられないから」
「……お前こそバカだよな」
「うるさいわよ」
こうして軽口をたたきあう仲。それがオレとこころの関係だ。そのために必要なんだとこころは思ってるんだ。
「けど微妙にショックだよな……オレと一緒に寝るのは罰ゲームですか?」
「……寝るだけじゃないでしょうが」
「でも、やっぱり嫌なんだろ?」
「ねぇ、俊行。アンタは楽しい夢から覚めたらどう感じる?」
「さびしい……かな」
「そういうことよ」
「どうゆうことだよ……」
「そのままの意味よ」
どこか苦笑しているようにも見えるこころの顔は何かを諦めているかのように見える。
「まぁ、今までは夢の中でさえ苦しい思いをしてたからね。少しは楽になったかな」
「それは……よかったな」
こころの言っている事。なんとなく分かるような気がする。そしてそれはきっとオレは分かってはいけないことだ。
「まぁ、なんて言うかアレだ………お粥食べさせてくれ」
だからオレは話を終わらせる。
「はいはい。子どもみたいなんだから……」
軽口をたたきあう仲。それがオレとこころの関係だ。
少しだけわだかまりが解けました。どろどろ度が少し減り、ほのぼの度が微妙にあがりました。