観察52:裏切り
「はぁ……やっとテストも終わったな」
3日間のテストという難行を終えた今日。オレはなんとも言えない達成感とともに放課後を迎えた。
「あはは……確かに疲れたね」
「まったくだ」
帰る準備を手早く済ませた瑞菜にオレはそう返す。
「それじゃあさ、テストが終わったお祝いを兼ねてデートに行こうよ」
「う〜ん……そうだな。行くか。でも瑞菜。お前、どっか行きたい所あるか?」
「遊園地!」
「却下」
半日で(以下略)。
「じゃあ海に行きたい」
「海ねぇ……家から徒歩五分だぞ? いいのか?」
オレん家と瑞菜の家は海にかなり近い。あらたまって行くような場所じゃないんだが……。
「とーくんと一緒に海が見たいんだよ」
「そっか……じゃあ行ってみるか」
オレと瑞菜はとりあえず家に向かった。
「う〜ん……さすがに泳ぐのは無理かな」
「そりゃまだ梅雨にも入ってないからな」
海。まだこの季節は泳ぐには寒い。
「私の水着でとーくんが悩殺されるのが待ち遠しいよ」
「あはは……」
それはないな。
「夏までにこころさんと同じくらい大きくなれば可能だよね」
「あはは……」
それが何よりもない。
「そう言えばさ、最近とーくんも『あはは』って笑うようになったよね?」
「そう言えばそうだな」
「もしかしてとーくん……私の真似をしてからかってるの?」
「なわけないだろ。言われて初めて気がついたんだから」
「そうなの?……じゃあ何で?」
そんなのは決まってる。
「瑞菜が好きだから」
「ぁ…………………」
「よく言うだろ? 夫婦はよく似るって」
「あはは……とーくんてば……」
「だからさ……信じてくれよ。確かに瑞菜に辛い想いをさせてるけど、確かにオレは瑞菜が好きだって」
「うん。私はいつでもとーくんのこと信じてるから」
そう言って笑う瑞菜にオレはこころの中で謝った。
「俊行? 入るよ?」
夜遅く。雪奈も帰ったころ。今日もこころはやってきた。
「ああ。さっさと入れ」
毎夜のようにこころは来た。
「じゃあ失礼して……」
こころは罪を償うつもりで。
「いらっしゃ……って何て格好してんだよ?」
オレは罪を償わせるという詭弁を持って。
「なにって……チャイナ服」
互いの罪を舐め合うように。
「店の制服じゃねぇか……」
罪を重ね続ける。
「でもこういうのって燃えるでしょ?」
上辺だけは明るく。
「ノーコメントな」
オレ達は裏切り続ける。
「クスクス……それじゃ始めましょうか」
艶やかに笑うこころはどこか悲しそうで……。
「ああ」
オレ達は似ている――
「……ごめんね」
そう言ってこころがキスをしてくる。
「……心配するな。大丈夫だから」
そう言ってオレはこころを抱きしめる。
――ただ、そう思った。
もうそろそろ伏線の回収と言うか、伏線を張るというか、物語の核心に迫って行きます。
まぁ、一時はほのぼのどろどろと行きますので。