観察51:笑うしかない
「ん……やっと起きたわね」
朝。起きてすぐ。こころの声が耳に入る。
「こころ……か? 何でお前がオレのベッドに……」
「女の子にそんなこと言わせたいの? 俊行の変態」
そこでオレはこころ、それと自分の格好に気づく。
「……あ〜……とりあえずあれだな。服着るか」
「ん。そうしましょ」
オレ達は身だしなみを整えた。
「そろそろ雪奈が来る頃ね」
「そうだな」
平日はオレ達を起こすくらいに早く来る雪奈だが、休日は朝食の時間くらいに来る。だから休日に関しては朝食をオレとこころで交代で作っていた。
「……分かってるとは思うけど」
「大丈夫よ。瑞菜さんにも雪奈にも言わないわよ。あくまでもアタシと俊行のことなんだから」
「ならいいけど」
自己保身以上に二人が傷つくのは嫌だ。ただでさえ二人には辛い想いにさせてるんだから。
「お兄ちゃ〜ん! 来たよ〜」
無駄に元気な声と一緒に雪奈がやってくる。
「……朝からハイテンションだな」
「まったくね」
オレとこころはいつも通りな雪奈に少し安心しながら声をかける。
「むぅ……そういう二人は相変わらず朝は弱そうだね」
「相変わらずというか、昨日はテスト勉強してたのよ」
「ふ〜ん……お兄ちゃんも?」
「ああ」
「珍しいね。お兄ちゃんが自主的に勉強するなんて。いつもは私がしようって言うまでしないのに」
「あ〜……昨日はこころが一緒にしようって来たんだよ」
「へぇ……私が帰った後に勉強会してたんだ。もしかして昔の人も一緒に?」
「いや……昨日はこころとだけだな」
「二人っきりで夜遅くに……」
あれ? 雪奈ってば怪しんでないか?
「二人とも不潔だね」
「「っ…………!?」」
「きっと二人は保健体育を実技で勉強したんだよ」
よく見ると雪奈の顔には、からかうような色が浮かんでいる。
「「あは……あはは………」」
それでもオレ達は瑞菜のように苦笑いするしかなかった。
最近カオスですね。そしてそれがクライマックスへの伏線だとは誰も思わないでしょう。