観察4:下校
「お兄ちゃん。一緒に帰ろう?」
放課後。オレも雪奈も帰宅部なため基本的に帰るだけだ。帰る家も同じだから、一緒に帰るというのはけっこう論理的展開だ。だが……。
「飽きた」
「………お兄ちゃん? 何が飽きたのかな?」
「お前と一緒に帰るの」
「……………」
「さすがに毎日同じ奴と同じように帰るのは飽きるぜ」
別に雪奈と帰るのがつまらないという事はないが、少しは刺激が欲しい。
「……じゃあさ、今日は恋人ごっこしながら帰ろうよ」
……………………………………………………
「……………は?」
たまに思うが、こいつの言うことはオレの思考力を奪うな。
「お兄ちゃんと私が一緒に帰るのは決定事項なんだから、帰り方を工夫するしかないもん」
………決定事項なのか。
「お兄ちゃんが彼氏役で私が彼女役だからね」
「やるとしたらそれしかないと思うが………本当にやるのか?」
「もちろん」
即答だよ。
「まぁ、確かに新鮮ではあるけど……」
「それじゃあ始めるね。……よ〜い始め」
「はぁ………仕方ないか」
別に嫌じゃないし。……メンドイけど。
「……ところでお兄ちゃん。恋人ごっこって何をするの?」
「オレが知るかよ」
「…………………」
「…………………」
恋人ねぇ………
「とりあえず手でも繋いで帰るか?」
「そ、そうだね」
オレと雪奈は手を繋いで帰り出す。
「ところでお兄ちゃん」
「どうした?」
「電車の中でも手を繋いだまま?」
「オレはどっちでもいいが」
恥ずかしいけど、どうせこいつがやりたいなら断れないだろうし。
「じゃあ…………繋いだままで……」
「はいはい。わかりましたよ彼女さん」
家に帰るまで視線が痛いオレだった……。
あまあまというかもはやバカな二人組。