観察40:なんだかとっても助けてほしい状況
「俊行。今日は私に付き合いなさい」
ある日の休日。こころにオレは話しかけられた。
「何だよ?」
「バイトの面接受かったんだけどね」
「へぇ……良かったじゃないか」
「ありがと。……それで今日からシフト入ってるんだけどさ」
「うん。それで?」
「だから今日は私に付き合いなさい」
「……ごめん。話が繋がらない」
こころのシフトが入ってるのと、オレが付き合うのが全く繋がりがない。
「何て言うのかアレよ……つべこべ言わずついてこい」
「……こういうのを横暴って言うんだろうな」
オレはため息を吐きながらこころに連れていかれるのだった。……ちなみに首根っこ掴まれて。
「……何だ? この店」
こんな店この辺りにあったのか?
「見て分からない?」
「残念ながら」
「じゃあとりあえず看板に書いてある店の名前読みなさい」
「読むのも嫌なんだけど……まぁいいか。『メイド中華永野亭』」
………え〜と。
「……何だ? この店」
「読んだ通りでしょ」
………つまり?
「メイドで中華な永野の店ってこと?」
「そうよ」
「……何だ? この店?」
「メイドで中華な永野の店」
「質問していいか?」
「三つまでなら」
「……質問数を限定する辺りにそこはかとなく悪意を感じるんだが」
「あんたの為よ」
むしろこころの為だと思う。
「……じゃあ質問一。制服は何だ?」
「メイドチャイナ」
「…………質問二。この店のジャンルは?」
「料理店」
「…………………質問三。永野亭ってもしかしなくても?」
「あんたの想像通りじゃない?」
「……………………」
質問を終えたオレの心境。
「帰る」
こんな店に関わりなんて一つも持ちたくない。というか一度持ったらなんか取り返しつきそうにない気がする。
「まぁそう言うなよ海原」
……いきなり現れるな悪友A。
「とにかく中に入っていけ」
「そうそう。話だけでも聞いて行きなさいよ俊行」
「……助けてくれ瑞菜」
オレは瑞菜にテレパシーで助けを求めながら連行されていくのだった。
……というか想像するだに恐ろしい。