観察35:デートじゃありません
「とーくんとーくん」
「どうした? 瑞菜」
瑞菜と付き合い始めてから約1週間。休日の日にオレは瑞菜と買い物(決してデートとは認めない)に出かけていた。
「もうすぐ遠足だね」
「……小学生かお前は。レクレーションとせめて言え」
「なんだっていいよ。とーくんと初めての学校行事だもん♪」
「……そういえば小学生に上がる前に別れたから初めてか」
「そうだよ。だから本当に楽しみなんだ」
「といってもオレ達は3年だからな。適当に遊ぶだけだぞ?」
ちなみにこの間のホームルームで缶けりをすることに決まった。………どうやらオレのクラスは小学生な思考をしているらしい。
「楽しみだよねぇ♪」
「………人の話聞いてねぇだろ」
「あはは……ごめん」
まぁ、瑞菜の楽しそうな顔を見るのは好きだからいいんだけど。
「でも、本当に楽しみだなぁ」
「さっきからそれしか言ってないぞ?」
「あはは……ごめん」
まぁ、瑞菜の楽しそうな(以下略)
「ところで、今日は何を買いに来たんだ?」
「遠足……じゃなくてレクレーションに持って行く物とかを買いに来たんだ♪」
「はぁ……缶けりに何がいるんだ?」
適当に動きやすい服を準備すればいいだろうに……。
「とりあえずおやつはいるよね」
「まぁ、ないよりかはいいかもな」
「次に懐中電灯でしょ?」
「……夜まで缶けりするのか?」
「その次は替えの電池」
「懐中電灯の電池が切れるまで遊ぶのか……」
「後は非常食一式」
「おやつじゃ足りないのか……」
「最後に勝負パンツ」
「…………………」
こいつはどこでどんな勝負をしてくるんだろう?
「これでとーくんと二人きりで無人島に漂流しても大丈夫だね♪」
「むしろお前の頭が大丈夫じゃないがな」
「あはは……浮かれすぎかな?」
「間違いなく」
「でも……やっぱりとーくんと一緒にいれるでけで私は浮かれちゃうから」
「……恥ずかしい奴」
「あはは……とーくんの顔真っ赤だ」
「うるさいよ」
何でこんなにオレの心を乱すんだろう? 瑞菜は。まるで……
(……雪奈みたいだ)
「?……とーくん?」
「ん? どうした?」
「考え事?」
「いや、ぼーっとしてただけだ」
「そっか。ならいいけど」
オレはごまかして買い物を続けた。
缶けりは真剣勝負だと面白い……可能性もなくはない。