観察３４：報告〜こころ〜
「というわけで瑞菜と付き合うことになった」
夜。雪奈も家に帰った時間帯にこころに今日あったことを説明した。
「……あんた馬鹿でしょ？」
「確かに頭がいい方ではないけど」
「……やっぱあんた馬鹿だわ」
なんだか思いっきり呆れられてるオレだった。
「ていうか、何でそんな展開になるのよ？」
「勢い」
「…………」
「い、いや、冗談ですよ？ だからそんな虫を見るような眼でオレを見ないでくれ」
恐い上になんか悲しいから。
「……なんて言うか……やっぱり勢い？」
「コロスヨ？」
「片言で言うとさらに怖いな……」
「……本気で言ってんの？」
「雰囲気が大きく関係してたかも。その場の雰囲気に流されてオレも瑞菜も告白……みたいな」
昨日のことを瑞菜に見られてたのがそもそもの発端みたいだし。
「……なんだか軽いわね」
「流されたのは認めるけど、いつかはこうなってたと思うぞ」
例え今回の告白が偶発的な物だったとしても、そこにある想いに嘘はない。だから今回のことはなくてもいつか同じようなことがあっただろう。
「……本当に瑞菜さんのことが好きなの？」
「ああ」
「……雪奈よりも？」
「っ……」
雪奈のことを思うと胸が痛む。それがどうしてなのかは分からない。考えてはいけない。どちらにせよオレはもう選んだのだから。答えは決まっている。
「雪奈は妹だから……比べるような存在じゃないよ」
「ふぅ……やっぱあんた馬鹿だわ」
「うるさいよ」
誰よりも分かってるよ。それでもオレは後悔してない。だからこれでいいんだ。例えどんなに苦しくても。
「あと、これだけは言っとくわね」
「なんだよ？」
「同時攻略だけはやめなさいよ？」
「………」
「素人にはきびしいわ」
「……オレはたまにお前が分からなくなるよ」
「ちなみに私は攻略対象外だから」
「……聞いてねぇよ」
なんだかなぁと思うと同時に少しだけ罪悪感のようなものが薄れたオレだった。
たまに自分が分からなくなります。
