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観察27:変わらない変化

オレはそっと雪奈の額に唇をつけた。

「ん………デコチュー?」

「懐かしいだろ?」

「懐かしいって……一度しかしてもらったことないよ」

そう。一度だけ。泣き続ける雪奈にした……オレ達が一緒に歩き始めた出発点の記憶。

「ちゃんと覚えてたんだな」

「忘れるわけないよ……」

「じゃああの時オレが言ったこと覚えているか?」

「『オレ達は本当の家族じゃない。だから本物以上なろう』……だよね? うん……一言一句覚えてる」

それは誓いの言葉。何も繋がりのないオレ達を今なお繋ぐ大切な象徴。

「オレの気持ちはあの時と変わらないんだ」

嘘だ。オレはそれ以上の想いを持っている。だからこれは戒めの言葉。オレと雪奈、二人を繋ぎ同時に近づけなくする壁。

「そう……だよね。お兄ちゃんにとって私は妹みたいなものだもんね」

「あぁ」

嘘だ。オレは家族に対する以上の気持ちを持ってる

「子ども……何だよね?」

「少なくともオレにとっては」

嘘だ。オレにとって雪奈は子どもとか大人とか関係ない。それくらい大切な存在だ。

「恋愛対象になんて成らないよね?」

「っ……あぁ」

大嘘だ。だからこそオレは困ってんだから。

「オレにとって雪奈は大切な妹だから」

それだけじゃない。それでもオレにはこうとしか言えない。嘘つきが言うただ一つの本当。

「うん……分かってる。お兄ちゃんには私はそういう対象に見れないよね」

違う。泣きそうな雪奈にそう言いたい。でも言えない。言うわけにはいかない。

「あぁ……オレ達はずっと兄妹だ」

それがオレの出した答え。大好きな雪奈と一緒にいれて雪奈の可能性を奪わない……そんな答え。

「……うん。分かった」

長い沈黙の後、雪奈は確かにそう言った。

「私達はずっと兄妹だよ」

どこか吹っ切れたように雪奈は言う。

(……これで良かったんだよな?)

雪奈の顔はどこか笑っているようにも見える。

ズキッ。

胸が痛む。どうしてだろう? 雪奈は今笑ってるのに。

「だから……改めて言うね」

「何をだよ?」

「大好きだよ」

「……馬鹿だよお前は」

「えへへ……」

雪奈の真意は分からない。それでもただ言えることはある。

(……これからもこいつに振り回されていくんだろうな)

いつの間にか胸の痛みはなくなっていた。


この話のサブタイトル。結構気に入ってたり。

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