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観察23:妹談議

「そう言えば俊行。なんかいいアルバイト知らない?」

こころが家に住むようになってもうすぐ一週間経とうとしている休日の朝。こころがそんなことを言ってきた。

「アルバイト? 知ってることには知ってるけど、何? 金に困ってんのか?」

「一応あんたん家に世話になってるからね。少しは食費とか渡そうと思ってね」

「食費? 要らないぞ別に。ていうかお前から貰うなら雪奈からも貰わないと」

朝昼晩の食費に光熱費。寝るとき以外家にいるからな。あの猫娘。はっきり言って本当に住み込んでるこころと変わらない。

「雪奈から貰わないのは当たり前。兄妹でしょうが。アタシは居候だから気分的に払わないと済まないのよ」

「気にしなくていいのに……」

「気にするの。それに少しは遊ぶ金も欲しいしね」

「ふ〜ん……そう言えば学費とかどうなってんだ?」

「学費の方は口座引き落としだからアタシは感知してない。……本当は嫌なんだけど」

まぁ、こころの家庭の事情はオレがどうこう言うことでもない。こころはオレなんかよりしっかりしてるし、たぶん学費も最終的には返すつもりだろう。借りは作りたくない……こころはいつもそう言ってたから。

「しかしバイトか……なんかこころがやれそうなやつあったかな」

「俊行はバイトしないの?」

「してるぞ。不定期だけど」

「……不定期で金稼げるの?」

「まぁ普通のバイトじゃないしな。とにかくお前には関係ないよ」

「ま、アタシも雪奈関連以外はあんたに深入りする気ないし」

「そういうことだ。まぁアルバイトのことは知り合いに当たってみるよ」

「よろしく」

「お前くらい美人だったら飲食店系はほぼ受かるだろうし」

「当然よ」

自信満々に胸をはるこころ。恐ろしいのはそれが自信過剰じゃないこととその胸の大きさか。

「……目がいやらしいわよ俊行」

「心配するな。雪奈にも瑞菜にもないから珍しいだけだ」

雪奈は微妙だし、瑞菜はまな板だし。

「それ聞いたら雪奈は怒りそうね」

「瑞菜は泣きそうだな」

まぁ別にオレは胸は大きくても小さくてもいいんだけど。

「けど、どうなの? 雪奈となんか最近進展あった?」

「進展って何だよ? あの日からずっと兄妹してるぞ」

「いや……そういうことじゃなくてね? なんていうか……ほら、雪奈の気持ち分かってんでしょ?」

ああ……またあの話か。

「こころも雪奈がそういう意味でオレのこと好きだって言うのか?」

「雪奈の様子見てたら誰だってそう思うでしょ」

「でも分かるだろ? 雪奈に恋愛なんてまだ早いって」

「そりゃそうかもしれないけど……でも雪奈ももう高校生よ? 例え雪奈が愛情に疎いとしても、恋愛してもおかしくないでしょ」

「そうだとしてもオレ以外だ」

認める訳にはいかない。雪奈が幸せになるには。ちゃんと将来があるような人と恋愛するべきなんだ。

「……あんたも強情ね。でも本当にいいの? 好きなんでしょ? 雪奈のこと。妹としてじゃなくて一人の女の子として」

「……黙秘」

「それって好きだって言ってるようなものよ?」

「うるさいよ」

分かってんだよ。自分の気持ちは誰よりも。

「まぁ別にアタシはあんたがどうしようと何も言わないけど」

「いいのか? 雪奈のことも関係あるだろ」

「あんたが雪奈の兄貴をやるのは変わらないだろうし、今はアタシもいる。雪奈が一人にならないならアタシは何も言わない」

どうしてこころは雪奈のことをこんなに大事にするんだろう? そこだけはずっと分からない。

「ただ……あんたは雪奈があんた以外の人を好きになっても耐えられるの?」

…………………………

「……耐えてみせるさ」

雪奈の為に。それだったらきっと耐えられる。

「その強がりがいつまで続くか楽しみね」

「うるさいよ」

しかし、瑞菜といいこころといい、どうしてこんなにオレの考えていることがわかるんだろう? 謎だ。

「そう言えば今日は雪奈来ないわね?」

「そうだな。もう昼前なのに」

「……まさかね」

「ん? 何がだ?」

「別に。あんたは気にしなくていい」

「そうか……」

なんとなく嫌な予感がするオレだった。


最近永野を見てない。

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