観察22:ツンデレ娘の策謀
「にゃー……にゃー……」
「うぅ……くすん……」
雪奈ネコ化。瑞菜泣いてる。
「帰っていいか?」
「ここはあんたの家でしょ」
なに馬鹿なこと言ってのよ? って感じでいいながら、こころは焼酎の瓶を空にしていく。
「……そしてお前は何を当然のように焼酎飲んでんだよ?」
「だってウィスキー空になったんだもん」
「……もういいです」
後で知り合いの刑事さんに相談しよう。完全犯罪はどうすればいいですかって。
「てか、マジでこの状況で王様ゲームなんてことするのか?」
「何よ? なんか問題ある?」
「あの二人思いっきり酔ってるだろ?」
「あ〜……本当ね。たったあんだけでよくあんなに酔えるわね」
「むしろ雰囲気に酔ってるのかもな。酒は酔っ払うものだって意識があったのかも。それにずっとテンション高かったから、ちょっとしたきっかけで理性が崩れやすくなってたかも」
「そんなもんなの?」
「知らん」
適当に理由つけてみただけだ。
「まぁとにかく、あの子達は酔っ払っていると」
「そうだな」
「やっぱり王様ゲームしかないじゃない」
「どうなっても知らないからな」
「とにかく始めるわよ」
「はいはい。主賓の言うことは聞いてやるよ」
こうして危険な状況で王様ゲームなんていう爆弾が投下された。
「王様は……アタシね」
「またお前かよ……」
「でもさ、俊行。なんでアタシって王様なの? 王女とか女王とかじゃなくて」
「そんなことにいちいちケチつけるな。さっさと命令を言え」
「じゃあ………1番が……」
オレは2番だからとりあえず大丈夫か。こういうのは何かをする方が恥ずかしいからな。
「2番を社会的に抹殺する」
大丈夫じゃありませんでした……。
「1番は誰?」
「私だにゃー」
雪奈か………。
「じゃ、2番は?」
「……オレだよ」
「じゃ雪奈。俊行を社会的に抹殺してちょうだい」
「了解だにゃー」
「了解すんなよ!? 何する気だ!?」
「お兄ちゃんはにゃにもしにゃくていいし、お兄ちゃんにはにゃにもしにゃいよう」
「……すっごく嫌な予感がする……」
「お兄ちゃんを社会的に抹殺すればいいんだよね?」
「手段は問わないから」
問えよ。
「じゃあいくね………『私はお兄ちゃんにょ奴隷でペットです。お兄ちゃんに調き―――」
「うわー!! 放送事故放送事故!!」
「―――ょうされてます。家に帰るといつもご主じ―――」
「待て! 本気で待て! それ以上はアウトだ! outだ!」
「―――ん様と呼ばされています』」
「………何を言い出すのかな? 雪奈」
「今にょ携帯で録音したにゃ。これを学校とかで流したらお兄ちゃんは破滅にゃ」
「思いっきり嘘じゃん……」
「でも、俊行みたいなさえない男になんで雪奈がなついてるのか、みんな納得できるじゃない」
「本当に破滅だな!!」
マジでしゃれになってない。
「後で今の録音したのは雪奈にもらうとして……次行くわよ」
「うぅ……もう勘弁してください」
「何言ってのよ? まだ始まったばかりでしょ?」
「そんなの関係ないくらい疲弊しました」
「知らない。じゃみんなくじ引いて」
オレ以外の全員がくじを引いていく。
「じゃ、最後に余ったこれが俊行のね」
そう言って手渡されたくじの番号は3番だった。
「うぅ……やるしかないのか……」
「あら? またアタシが王様ね」
「怖いよぉ……恐いよぉ……」
「なんか俊行が壊れてんだけど……まぁいいか。じゃあ1番が……」
「くすん……あれ? 私だ」
瑞菜が1番か……。
「3番を社会的に抹殺する」
「同じ命令かよ!? そして狙ったようにまたオレか!?」
「あんたも不運ねぇ……」
「チートしてないよな?」
「確率は3分の2なんだからおかしくないでしょ」
確かにおかしくない確率だけど……。
「くすん……とーくんを殺せばいいの?」
「あのぉ……瑞菜さん? 社会的にですよ? だからその果物ナイフはしまってくださいね? オレまだ死にたくないですよ?」
「くすん……じゃあ社会的にとーくんを貶めればいいんだね?」
「いや……うん。そうなんだけど……」
やっぱおかしくね?
「じゃあ、とーくんとの想い出を言うね」
「は? それが何でオレを社会的に殺すんだ?」
「うん実は私……『とーくんに濡らされて服を脱がされたり―――」
「え? 何それ? そんなことあったか?」
「―――下着の中に手を入れられて探られたりしました』」
「いや、オレ知らないですよ?」
「「うわー……」」
「そこ! オレはそんなこと知らないからな!」
「くすん……とーくんてば私をお嫁さんにいけない体にしたのに……」
「いや、マジでオレ身に覚えないし」
「うぅ……とーくんてば秘密基地でのこと忘れたの?」
「?……ぁ……」
そう言われればあった。でもあれは……。
「あれは水遊びしてたら瑞菜の服がびしょびしょになったから脱いだ方がいいんじゃないかって言っただけだし、下着に手を突っ込んだのはカエルが入ったから瑞菜がおびえてオレにとってって頼んだんじゃないか」
オレに罪はない。だいたい小学生にもなってない頃の話だろ。
「でも、そんなこと、録音したの聞いただけの人じゃ分からないわね」
「録音ってこころ……」
まさか……。
「もちろん録音したわよ」
やべぇ……マジで破滅だ。
「はい。なんか死にかけてる俊行は無視して次いくわよ」
これ以上の放送事故はやめてくれよ……?
「あら? またアタシが王様ね」
「チートだ! 絶対チートしてんだろ!?」
「してないわよ……たぶん」
「嘘だっ!!!!」
「い、いや俊行……なんか怖いから……」
「だったらやり直しを請求する」
「わかったから。もう一回引きなおしましょ?」
「今度はオレから引く」
「わ、分かったから。なんか本当にあんた怖いわよ?」
オレは1番にくじを引く。結果は……。
「ふ、ふふ……来た……王様だ……」
「い、いや、俊行? 目がなんかいってるわよ?」
「こころ……お前3番だろ?」
「な、何で分かるのよ?」
「いや、あてずっぽうだったが……なるほど、こころは3番か」
「しまっ……」
「じゃあ、1番と2番が全力で3番をこちょこちょだ」
「了解だにゃー」
「くすん……こころさんを発狂するまでこちょこちょするんだね」
「い、いや……来ないで……」
「じゃあオレもう寝るわ。後かたずけよろしくな」
「おやすみお兄ちゃん」
「とーくんまた明日ね」
「ああ。おやすみ」
オレはそのまま自分の部屋へと戻った。途中で悲鳴だか笑い声だかわからない叫びが聞こえたが当然無視した。
普通の人ほど切れると怖いです。いえ、変な方向に。後、改めていいます。この話はフィクションです。実在の人物とか実在する話は一切使われていません。