観察19:ありえない
「もう! お兄ちゃんどこに行ってたの?」
始業式も終わり放課後。いきなりやってきた雪奈に大声で怒られた。
「いきなりどうしたんだよ雪奈」
「ホームルームの後で話をするって言ってたのに……」
「まぁオレが悪かったからさっさと話をしろ」
「う、うん。驚かないでね?」
「それは話によるな」
実は雪奈の言いたいことは想像ついているんだけど。
「実は……こころお姉ちゃんがうちの学校に転校してきたみたいなんだよ」
「へぇー」
「うん。やっぱり驚くよね? 朝に職員室の前で話しかけられた時は本当に驚いたよ」
「うん。オレも驚いた」
「……何でそんなに淡白な反応なの?」
「普通にもう知ってるからな」
「ど、どうして?」
「だってそこにいるじゃん」
教室の一角を指してオレは言う。そこでは転校先二人が改めて質問攻めを受けていた。
「お、同じクラスだったの?」
「ていうか、なぜその可能性を考えない?」
「びっくりしてたからだよ」
まぁそうだろうな。
「そんなことよりいいのか? こころと久しぶりにゆっくり話したいんじゃないのか?」
「大丈夫だよ。家に帰ってからたっぷり時間はあるんだから」
「ん? なんだ? 今日はこころ、家に遊びに来るのか?」
「違うよ。お姉ちゃん、お兄ちゃんの家にお世話になるって言ってたから」
「……にゃんだって?」
今、とんでもないこと言ってなかったか? 軽くオレが猫化するくらいな。
「別に問題ないよね。お姉ちゃんだもん」
「ありまくりだ」
「ん? 何が問題なの?」
「全て」
「大丈夫だよ」
………話が成立しない。
「……とりあえず、こころを問い詰めてみるか」
例え無駄なことになるのが分かっていても、男にはやらないと行けないことがある。オレは鋭気を養い、時を待つのだった。
人の家に転がり込む時はちゃんとアポをとりましょう