観察12:転校先
「えっとね………とーくん。もう大丈夫だから」
「ん、そうか」
「だから………あの………頭……」
「ん? 頭がどうした?」
「なでるのもういいよ?」
そう言えば慰めるために頭をなでてたな。
「もう大丈夫なんだな?」
「大丈夫………とまではいかなくても落ち着いたから」
「そっか」
オレはとりあえず離れる。
「………ラブラブだね? お兄ちゃん」
「オレに聞くな」
ていうか空気読め。
「ところで瑞菜。少し聞きたいことがあるんだけど、いいか?」
「うん。いいよ」
「お兄ちゃんのことどう思ってるのかな?」
「ひとまず雪奈は黙れ」
「うぅ……ひどい」
だから空気読め。
「あはは……それでとーくん。聞きたいことって?」
「いや、何で引っ越して来たんだ?」
「お父さんの仕事の関係だよ」
「ふ〜ん……でも大丈夫なのか? 学校とか。通える距離なのか?」
「それなら大丈夫だよ。通える範囲の高校に転校したから」
…………は? 三年になるこの時期に?
「ここから通える範囲で前の高校と同じくらいの偏差値の高校だから大丈夫だよ」
………なんとなく思う。
「転校先ってどこだ?」
転校先はオレ達が通ってる高校じゃないかと
「二木高校だよ」
「やっぱり………」
おもいっきりオレの通ってる高校だった。
「はぁ……同じ学校だよ」
「? とーくん? 何を溜息ついてるの?」
「いや、うん。平凡なオレの日常が消えてなくなろうとしているのを感じているんだ」
「?……私が同じ学校に行くのやなの?」
「瑞菜が学校に来ることによって起こる化学反応が嫌なんだ」
「? よく分からないよ?」
「詳しくはさっきから律儀に黙ってるやつから聞いてくれ」
とりあえずオレは頭を抱えるのだった。
ありきたり。もしくはお約束の展開