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観察11:説明〜雪奈〜

「……何から話そうかな」

オレは雪奈のことについて話していい事を取捨選択する。とりあえずは名前か。

「名前は白沢雪奈。年はオレ達の一つ下」

他に話していいこと……。

「オレと同じ高校通ってる」

……他は言えることないか?………ないな。

「以上」

「「はやっ!?」」

何を仲良くハモってんだ? ていうか何で雪奈まで物足りなそうなんだよ?

「いや、他何か聞きたいことあるか? 質問なら受けるぞ」

「……じゃあ、お兄ちゃんと私の関係は?」

「雪奈からの質問は却下な」

「むぅ…………」

いや、むくれるなよ。

「けど、とーくん。それは私も聞きたいかも」

関係ね………。



オレと雪奈が会ったのは8年くらい前だったか。雪奈の家族がオレの家の近くに引っ越して来たのがきっかけだった。この辺に住んでるのは年寄りばかりで雪奈と同じ年代だったのがオレだけだったのと一つ年上だったのもあって雪奈の事を頼まれた。雪奈の母親に。「この子の事よろしくね」と。



(………あの頃は何も問題はなかったんだよな)

どちらにしても過去のことだし、今のオレと雪奈の関係を示すことにもならない。ただ……。

「頼まれたからな。雪奈の面倒みること。それが関係かな」

雪奈の母親に頼まれたとき、オレは嬉しかったのを覚えている。一人っ子で兄弟が欲しかったオレにとって、それは本当に嬉しかった。

(………あのころの雪奈はお人形みたいで本当に可愛かったからな)

「えっと……妹さんのご両親?」

「ああ。雪奈がオレの家にいるのは雪奈の両親公認だ」

「…………泊まり込んだりはしてないんだよね?」

「…………シテナイヨナ?」

「この間したよね? お兄ちゃん」

こいつは空気読もうよ。

「………不潔だね。とーくん」

「いや、本当何もしてないし。本当にときどきだから」

実際やましいことは何もないし。

「そうだよ昔の人。私はお兄ちゃんと同じベッドで寝ただけだもん」

………煽ってんじゃねぇよ。

「………とーくん。やっぱり私お邪魔だったかな?」

「笑顔でそんなこと聞くな。無駄に怖い」

オレは苦笑する。

「……なんとなくとーくんと妹さんの関係は見えてきたかな」

「ちなみにどんな風に見えてる?」

「家族以上恋人未満」

「「……あってる」」

確かにオレと雪奈の関係を表すにはそれ自然だ。

「……うん。なんとなく雪奈ちゃんの境遇はわかったかな」

「?……何がわかったんだよ?」

「だって、この状況が公認されてるんだよね? とーくんと雪奈ちゃんは恋人同士でもないのに」

「……ああ」

隠し事なんてできないな。幼馴染に。

「雪奈ちゃん。困った時は私の家にも来てね?」

「?……どうしたの? 昔の人。いきなり優しくなったりして」

「……昔の人はやめて欲しいかな?」

「じゃあなんて呼べば?」

「お姉ちゃんとか」

「却下だよ」

「はぁ……いいなぁとーくん。私も妹が欲しい」

「そんなにいいものじゃないがな」

結局、雪奈は瑞菜のことなんて呼ぶんだろうな?……流石に昔の人のままじゃ困るぞ。

「そういえば、とーくん。おばさん達はいつ帰ってくるのかな?」

「おばさん達って、母さんと父さんのことか?」

「うん。お仕事なんだよね?」

「いや、死んだが」

「…………………ぇ?」

「今年が七回忌だから、もう七年になるのか」

「ぇ………? 死んだって二人とも?」

「ああ。事故だったからな」

我ながらあっさりしてるなと思う。でもまぁ、七年も経てば心の整理もつく。なにより七年前の時点でオレは救われてるから。雪奈ととある少女に。

「心配しなくても大丈夫だぞ。オレの面倒は叔父が面倒見てくれてるから」

生活費とかだけだが、あの人は仕事が忙しいし、家庭も持ってるんだから仕方ない。

「ぃや……そうじゃなくてね……」

「ん? どうかしたか?」

「私ね……おばさんとね……話すの楽しみにね……」

「瑞菜?」

少しずつ瑞菜の顔がうつむいていく。

「してたん……だょ。うん。……とーくんの話とかも聞きたかった。……おばさんに、私の……私のことも聞いて欲しかった」

うつむいてしまった瑞菜の顔は見えない。でも……。

「ありがとな。瑞菜。母さんの為に」

泣いてるのが分かったから。同情とかではなくて、瑞菜自身が母さんがいなくて悲しんでいるのが分かったから。

(………母さんか)

『瑞菜ちゃんが私の子どもだったら良かったのにな』

なんとなく小さい頃言われたことを思い出す。オレを迎えにきた母親が瑞菜の話を聞いて、そして話が終わった後にいつも瑞菜に言っていた。

(………よかったな母さん)

それだけ思って、オレは瑞菜を慰めにかかった。


少しだけいい話。なので空気読んで雪奈は最後おとなしかった

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