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観察10:紹介〜瑞菜〜

「え〜と……とりあえず名前か」

なんで十数年ぶりに会った幼馴染の紹介をやらないといけないんだろうと思いながらオレは話す内容を考える。とりあえずは名前だ。

「名前は春日瑞菜。年はオレと同じだな」

……他には何を言えばいいんだろう?

「……オレと同じ保育園に預けられてて、よく遊んでた」

……何も思い浮かばない。

「……以上」

「……それだけなの? お兄ちゃん」

「それだけなのかな? とーくん」

「あとは小学校に上がる前にどこかに引っ越したことくらいだろ。紹介することといったら」

……まさか、オレの初恋の相手だという訳にもいかないだろうし。



思い出してみると本当に恥ずかしい、ちびガキの恋だ。小学生になる前だっていうんだからませガキというかなんというか……。

別に瑞菜とオレの間に特別なことはなかったし、特別な関係もなかった。家は近くもなかったし、親同士が仲がいいという訳でもなかった。本当に保育園の中だけでの関係。

それでもオレと瑞菜は仲が良かったように思う。園内ではオレが行くところには、ひよこのようについてきたし、遊ぶのはいつもオレとで、本当にいつもそばにいたように思う。

印象的なのはオレが帰る時だろうか。オレを迎えに来たオレの母親にオレが今日なにしたのか話すのだ。楽しそうに。瑞菜の親が先に迎えに来てもオレが帰るのを待つ徹底ぶりで、瑞菜の母親さんのうれしそうな呆れたような顔を覚えている。そしていつも最後に「またね」と笑顔で言うのだ。



(……あの笑顔にやられたんだろうな)

というか、オレがませてたんだろうな。

「むぅ……でも、それだけにしてはなんだか二人とも親しげなんだよ。お兄ちゃんてば私に隠れて昔の人と連絡とってたんじゃないの?」

「だからいろいろ誤解を生みそうな発言をするな。……親しげというか、なんか昔と同じ雰囲気なんだよな。だから違和感がないのかも」

「で、でもそんなに昔のことって覚えてるのかな? 小学生にすらなってなかったんでしょ?」

「そ、それは………」

まさか初恋だったからとは言えないしな……。

「なんとなく……かな?」

「何を疑問形で言ってるなかなぁ? お兄ちゃんてば」

仕方ないだろ。こればっかりは。

「……まぁいいか。じゃあ昔の人は? よくお兄ちゃんのこと覚えてたね」

「私は……なんと言うか……毎朝思い出してたから」

「「………………………………………………は?」」

何を言い出すんだ? この幼馴染。

「えっと………実はね、私の初恋ってとーくんだったの」

「「ぁ………………………………………………?」」

マジデナニヲイイダシマスカコノヒトハ?

「いやっ! べつにね! 今も好きと言うんじゃなくてね! 昔……うん! 昔の話なんだけどね!」

じゃなきゃ反応に困りすぎるから。いや、十分既に困ってるけど。

「だからね、また会えるように願掛けををしたの。とーくんに会えるまで髪は切らないって」

「「そ、そうですか……」」

もちろんオレも雪奈も反応に困ってます。

「それにね、うそつきは嫌だったから」

「うそつき?」

「『またね』って言ったから」

なんだかなぁ……マジで反応に困る。

「でも、そうか。だからそんなに髪が長いのか」

とりあえず、当たり障りのない話題を振っとく。

「そうだよ」

「けど、そんなに長いと大変じゃないのか?」

「うん。本当に大変だよ」

「だけど、もう切れるよな?」

「ぇ?……あぁうん。そうだね」

ん? なんだか歯切れが悪いな。

「なんだよ? 切らないのか?」

「えっと……うん。ここまで伸ばすと切るのもったいないし」

「それもそうか」

「(………願掛けがもう一つあるなんて言えないよね)」

「ところで、お兄ちゃん。紹介も済んだし、昔の人には帰ってもらおうよ」

「却下。お前の紹介が終わってない」

「でも……どこまで話すの?」

「……とりあえずオレにまかせろ。悪いようにはしない」

「でも……」

「お隣さんだからな。ある程度の事は話とかないと警察呼ばれかねないし」

「そうだけど……」

はたから見たらオレって犯罪者っぽいし。

「とーくん? 警察って……君は何をしてるのかな?」

「と、とりあえず紹介するから聞いてくれ」

オレは慌てながら始めるのだった。

罪状は拉致監禁?

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