観察99:本当の狙い
「「という訳で、結婚することになりました」」
アタシは声を揃えてそんな事を言ってきた馬鹿兄妹を前にしてとりあえず頭を抱えた。
「「あいたっ!?」」
次に、はりせんで思いっきり叩いた。
「どうしてそうなった」
で、説明を要求した。
「えっと………お兄ちゃんに私が告白されて―――」
「―――雪奈に愛しとぇると言われて両想いになった」
「あい――」
「――たっ!?」
分かりきった事を言う馬鹿二人を更に叩く。
「そんな事はあんた達の様子を見れば分かる。どうして結婚なんてことに飛躍してんのよ?」
「「好きだから」」
…………頭痛い。
「それで? 結婚って何時の話?」
「「来週の日曜」」
「……………………………」
とりあえず私は携帯を手にとった。そして登録しているお隣りさんの携帯にかける。
「あ、瑞菜さん? 遅くにごめん。来週結婚するとか言ってる馬鹿二人とっちめるからちょっと来て」
『あははー、よく分からないけどすぐに行く』
――三分後――
「なるほど……とーくんと雪奈ちゃんが結婚する……しかも来週の日曜」
「呆れるしかないでしょ」
「あははー、とりあえず私はとーくんを押し倒して襲いたくなったよ」
「お、お兄ちゃんはもう私の恋人なんだよ!」
「あははー、別に雪奈ちゃんでもいいよ」
「せ、雪奈はオレの嫁だ!」
俊行が言ってる事が冗談にならない。
「……で? 本気なの?」
「「本気」」
ま、この二人が両想いになったんだから、結婚したいという気持ち自体は本気だと疑う必要ないんだけど。
「結婚したら学校とかやめないといけないわよ?」
「それくらいは覚悟のうえだ」
「私は……そこまで学校行きたくないし」
結婚するという事は自立するという事。学校行きながら生活するのは難しいと思う。
「えっと………とーくん、仕事はどうするの?」
「成人するまでは紘輔さんの所で働かせてもらおうと思う。三人暮らしていくくらいは働かせてもらえるはずだ。卒業後に働かせてもらえる約束だったから、それを早くしてもらう」
「……ま、俊行の事だからそれくらいは考えてるか」
「あはは……本気の本気………なんだよね?」
「ああ」
「もちろんだよ」
「本当に馬鹿よね………」
アタシはこの二人らしいと呆れる。
「それで? 式は?」
「それに関してはオレに考えがある。後でまた話すよ」
俊行のそう言った顔を見て、アタシはぴんときた。もしかしたら、俊行の本当の狙いはそこにあるのかもしれない。そう思った。