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武器を捨て、手を取り合おう

前回までのあらすじ

世界最強のレイパーとの異名をほしいままにするゴブリンスキー卿の魔の手が迫る。

モフリエルは幸福の村を守るため立ち上がった。


  ◆


「では、ファイヤードラゴンの元へ使者を出す。テイムしてやるからそっちから出向いてこいって」

「いや、なんでドラゴン呼びつけられると思ってるの、この人?」

「2秒で来い。ついでに焼きそばパン買ってこい。そう言っといて」

「ドラゴン相手にそんな口利いた瞬間に使者は丸焦げだよね?」

「そうだな。じゃあ、頑張って!」

 モフリエルは戦神チュールの背中を叩き、優しく送り出すのだった。

「ただいま」

 チュールは帰ってくるのだった。

「おお、戦神チュールよ。その速さ、稲妻の如し。よくぞ使者としての役割を果たしてくれた。その成果、報告することを許す」

「ファイヤードラゴンは快く申し出を断って激怒したよ。ぜってぇこの村潰すって」

「これは使者の責任だな。誰か、この者の首をはねてファイヤードラゴンの元へと送れ」

「あと、わたしって有能だからケルベロスとか沼の妖婆達にも話通しといてやったよ。ケルベロスにはわんわんって。妖婆達には謎かけ『昼間は大人しい振りして夜は激しいタイプの女の子ってな~んだ?』って。どっちもすこぶる激怒して、ぜってぇこの村潰すって」

「ちなみにその女の子ってなんだ?」

「お菊人形。勝手に髪が伸びるタイプの奴」

「誰もそんな話聞いてない」

 モフリエルは勝手なことを言った。

「まあとにかくわたしのお陰で情勢ははっきりしたね。この村の周り、全部敵」

「なるほど、褒めてつかわす。褒美として自害することを許す」

 本来なら打ち首の所を自害で許す温情をみせるモフリエル。

「でも、もうダメじゃん? 世界最強のレイパーの軍勢にファイヤードラゴンやらのモンスターにまで狙われて。これはもう、いと高きエルフの子自ら出向いてモンスター達をテイムするしかないね!」

「いいえ、それには及びません」

 モフリエルは穏やかな表情で首を横に振った。

「このようなこともあろうかと、既に手を打っておきました……具体的には、お前が使者に行っている間にモンスターをテイムしておいた」

「わたしが使者に行っている2秒程度の間にそんなことしてたの? ていうか、何をテイムしたのよ? お菊人形?」

 戦神チュールの問いに応えるように、一匹のモンスターが姿を現す。

 それは触覚の生えたアルマジロのような風体だ。

「これこそは錆び食いとして知られるラストモンスター。錆びた金属を食べる人畜無害にして殺傷能力ゼロのモンスターだ」

「ほうほう、なるほどなるほど、わかってきたぞ」

 チュールはわかってないけど賢しげに頷いて見せた。

「この怪物の力が如何なるものか、示してやろう。女パラディンよ、これに」

「何のようだ」

 呼ばれて聖騎士が迷惑そうな顔でやってくる。

「こいつと戦って?」

「あ! こいつ、ラストモンスター!? いや、ダメだろ、こいつは!? こいつ最悪のクズモンスターだぞ!?」

「いいから」

「あー!?」

 刹那。

 ラストモンスターの触覚が聖騎士の鎧をかすめ、一瞬にしてその鎧が錆び、崩れ落ちた。

「わ、私のプレートメール+3があああっ!」

 ラストモンスターの触覚が聖騎士の剣をかすめ、一瞬にしてその剣が錆び、崩れ落ちた。

「わ、私のロングソード+3があああっ!」

 後には武器も鎧も失って丸裸になったパラディンレベル12が残るのみ。

「なんでプレートメールの下に何もつけてないの? なんで全裸なの?」

「裸プレートメールはロマンだから」

「でも、これなら服だけ溶かすスライムとかテイムした方がいいじゃん。いろいろ膨らむよ?」

「そんなスライムはいない」

 いないのであった。モフリエルは続けて言う。

「この怪物なら誰も傷つけません……。そうやって全ての武器も鎧も無くしてこそ、人はわかり合えるのです。人々の間に愛と幸福を伝えるにはうってつけの怪物です。人は皆、武器を捨て、手を取り合わねば」

「こいつでゴブリンスキー卿の軍勢を武装解除するっていうの? 武器も鎧も無くなれば無力化できるってこと?」

「武器も鎧も無い状態なら村人共をけしかけて蹂躙できる。そうやって捕らえた奴ら全員にもチュール汁飲ませて我が手兵とする。敵を殺さずに自分の配下にしていけば、労せずして勢力拡大できる」

「武器を無くしてわかり合うんじゃ無かったの?」

「わかり合えるとも。我が愛と幸福の前に全ては統一されるということ、丸裸にされ蹂躙されれば、浅はかな定命の者共でも理解が及ぶだろう。ラストモンスター200匹くらい揃えてぶつけてやれば、武力ばかりを重んじるごろつきどもも思い知るに違いない」

「クエストにラストモンスター200匹とか出てきたら、そのシナリオ、クソクソのクソやぞ」

「わ、私のプレートメールは? どうしてくれるんだ? 手に入れるのにすごい苦労して、そこらの雑魚ではもうダメージ受けないくらいまで強化されたんだぞ!? ロングソードだって+3修正ついてファンブル以外ならなんでも当たるくらい強化されてたのに!」

 無視されたという。

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