第七話⊿ー果たし状ー
季節はすっかり春になり、灰色だった軍生活からいったん離れ俺はついに魔法学園に入学することができた。
試験についてだが以外にあっけなかった。
考えれば魔法学園は軍や王国騎士団になる者を育てる機関だ。
ほかの受験者には悪いが、軍からやってきた俺が苦戦するわけがない
俺は魔法を身を守るための武器だと思っている、それなのにここの受験者ときたらほとんどが勉強で使用する知識だと思っているらしい、そんなぬるま湯につかっている奴に負けたら一生の恥だ。
後日学園の関係者と名乗る者から『入学式の生徒代表挨拶を首席たるアルス殿に頼みたい』との申し入れがあったが、俺はあまり人前に立つことが好きではないため『その役目は次席の方に頼んでください』と丁重にお断りした。
だがいざ入学式が始まると生徒代表挨拶、つまり今回の試験の次席がやったわけだが、なんと次席がクライス王国の第二王女だったため式中にも関わらず全員がその場で敬礼をするというハプニングが起こった。
そして各々のクラスが発表され今に至る
「へー、あんた合格したんだすごいじゃない」
「俺は受験に筆記用具を一式忘れる奴が受かったことに驚きだよ」
二次試験の時に隣の席だったリアは新クラスでも隣の席のようだ。
「いまだにあんたが首席だってわからないのよね」
「俺は人の順位を勝手にみるお前の考えがわからない」
生徒代表挨拶は逃れたものの結局各クラスに成績上位者の張り紙が張られてしまい、一位にしっかりとアルス・キルリアと書いてあった。
余談だが俺を化け物呼ばわりした双子の妹、アリス・ヘスティアが三位、意外なことにライトが九位と大健闘、そしてあれだけ短歌を切っていたリアは三十九位とまあ十分すごいのだろうがどうにも目おとりする順位だった。
そんなことよりライトが九位となると今後のクライス王国が心配になってくる、あいつは敵地に生身で突っ込むほどの脳筋馬鹿だからな、それ以下となると、いやこれ以上考えるのやめよう
そして今は学校側が配慮として新しいクラスメイトとコミュニケーションをとる時間となっている、他のクラスメイト達は良き友を作ろうと会話に勤しんでいる中、俺とリアはこうやってかれこれ二十分近く皮肉を言いながらお互いの情報交換をしている
どうやらリアは俺の予想道理地方貴族の娘らしい
貴族にも階級は存在する、伯爵とか侯爵とかいうあれだ。
リアの家は子爵、爵位の中で一番下だ。
ちなみにキルリアは男爵、ヘスティアは伯爵なので、一応俺のほうが立場は上のはずだが
「全く、いい加減立場をわきまえなさい、身分の下の人間は黙って身分の上の人にペコペコ頭下げてればいいのよ」
どうやらリアは俺のことを平民だと思っているらしく、俺が図星をつく挑発をすると必ずこうやって逃げ道を作ろうとする、俺の身分を知ったらどう反応するだろうか
そんなことを考えているをいつの間にかさっきまでの喧騒が嘘のように止んでおり、目の前のリアは胸に手を添え頭を下げている、クライス王国の女性の敬礼の姿勢だ、そしてこの敬礼は王族にしか向けられない
「さがしましたわ、アルス・キルリアさん」
俺の後ろに立っていたのはこのクライス王国第二王女スヴィア・クライスその人だった。
「これはこれは、スヴィア王女、お目にすることができ光栄です」
「建前は結構、こころにも思ってないことを言ったってうれしくとも何ともないですもの」
王族の証である金色の髪をたなびかせながらスヴィアは口を開く
「アルス、私と勝負をしなさい、これは命令よ、逃げることは許さないわ」
「ほう、俺がいやと言ったら」
俺は椅子に座っていてスヴィアが立ちながら話しているため見上げる形になってしまったができるだけリードをとられないよう挑発気味に言うと待ってましたつばかりにスヴィアの口角が上がる
「その時はキルリアの終わりだと思いなさい、別に私を勝たせろなんて思ってないわ
、むしろ手を抜いたら許さない、力さえ見せてもらえれば私のこの悔しい気持ちもおさまるだろうし」
スヴィアは顔こそ笑っていたがおそらく相当悔しかったのだろう
スヴィアは踵を返すと少しかすれた声で『今日の放課後、訓練棟で待ってるわ』と吐き捨てるように言うと教室を後にした。
そしてしばらくの静寂が訪れる、がその静寂をぶち壊したのはリアだった。
「アルスってもしかして貴族なの」
ああそうだよ、そしてお前より俺のほうが爵位が上だと言ってやりたかったがせっかくできた話し相手と気まずい空気になっては困るので
「想像に任せる、権力を見せつける輩は嫌いだからな」
とリアの面に吐き捨ててやった。
「はあ、これだから平民は低能よね、権力は使うためにあるんじゃない、使えるものは私はどんどん使うわよ」
リアは自信満々にそう答える
リアがライトよりも順位が低い理由が垣間見えた気がした。
最後まで読んでくれて感謝感謝です!