序章
じゃら……。
重々しい音をあげたのは俺の両腕を拘束するブットイ鎖。
ネズミ色の囚人服に両腕を拘束する太い鎖、極めつけが足首から延びるこれまた頑丈そうな鎖の先にある鉄球……歩くたびに『ごぉぉ……ごぉぉ……』という重く陰鬱な音がでる上、たまに指に当たって地獄の苦しみをうける!
考えたヤツはまさにドMだろう。
その鉄球を手に持ちながら、判決を待つ罪人のように――いや、まさにその通りの状態だった。
「判決を言い渡す!」
やたらと大仰な言い回しをしながら、
「判決は死罪! 縛り首に処す!!」
背後にいた刑務官が俺の肩を掴むと、視界が遮られるっ!?
「お、おい! やめろ! やめてくれっ!! 払うから、働くから――」
そんな事を言っても背後の何者かに追い立てられる。
「頼む! もう一度――もう一度――」
階段のような段差を登らされる。
「頼む――」
懇願するように言うが、首に荒縄の感触がすると後半は口からでることができなくなった!
バガン!
そのまま無慈悲に消失する床っ!!
襲いかかる浮遊感――
「頼む……やめてくれ……払うから……働くから……」
自室の床のうえでそう懇願する。
「助けてっ! お願い! ここを開けて」
そう言う声は俺のモノではない。
声のする方――自室のドアのほうを見ると激しく叩かれ、いまだに助けを求める声がしていた。
「ええっと……」
場所を階下の潰れた酒場へと移し。
「助けてくださいっ!」
自分が縛り首あう悪夢を見たのだ。助けてほしいのはこっちの方なのだが……。
「まず、アンタは? 確かどっかで見た事があるような……」
正面に座るとても困っている男性――同年代ぐらいで肥満体系、見事に突き出た下っ腹にやや薄くなって後退しはじめた頭髪。どこにでもいそうな人当たりの良さそうな中年男性。
「ぼ、僕の事憶えてないんですかっ!?」
「えっ!?」
知り合いだったのか……?
「あっ! もしかして街の入り口で武具の装備し忘れを指摘してた人?」
「お金やアイテムの預り所の係員ですっ! しかもアナタ専属のっ!!」
その言葉にカウンター越しにいつも人の良さそうな笑みを浮かべながら、お金や不要になった道具を受け取っている姿が浮かんだ!
「おぉ! そう、そうっ!! 憶えてる、憶えてるよ!
「思い出していただけましたか?」
「いやいや憶えてるから、賢さ三〇〇あるから、憶えてるから」
疑わし気な視線を向ける預り員。
「そ、そんな事よりも大変なんだろ?」
「はっ! そうでしたっ!! お願いします。助けてください」
相手を思い出した事でそれまでさんざん世話になった思い出まで蘇ってきた……さすがにこれは断れそうにもない。
「……仕方ない。勇者するか」
また一歩、縛り首への階段を上った気がした。
これから長編も毎日更新する事にしました!
今日は4月1日 エイプリルフールですよ!