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Day.1-5 君の縄

「ビュルビュルビュルー!

 活きのいい人間が二人もいるビュル!」


 現状報告。

 ゴブリン、もとい、ギョビュルリンに囲まれている。

 イリヤさんはあえて待機し、こいつらの到着を待った。ということは、勝てる算段があるのだろう。まぁ先程もドでかい熊を一撃で葬り去ったくらいだから、戦闘力はかなりのものだ。


 敵はやはり4人、いや4体か。人間で言えば子供くらいの背丈の緑色の皮膚ととんがった耳を持つ魔物が俺たちを囲んでいる。手には木の棍棒。ありがちな武器だ。


 と、状況分析が一通り終わったところで、いちおうツッコミを入れておきたい。


 その語尾の“ビュル”は何だよ!?

 さっき俺が能力で会話を盗み聞きした時はそんな口調じゃ無かったよね君達!?


「持って帰ってアニキ達にプレゼントするビュル!」

「そうするビュル!」


 変なキャラ付け止めてくれませんかね?

 呆れながらイリヤさんの方を見た。


 って、えええぇぇ!?

 即効で両手を差し出すイリヤさん。抵抗とか一切なし!

 あまりにも潔すぎじゃないか。少しは状況を打開する努力をしようよ。さぁ捕まえてくださいみたいな態度をとらないでくださいよ。


「あの、普通に勝てますよね?

 このくらいの相手」


 小声で訊いてみる。


「あぁ、瞬殺だ」


「でも今ものすごく無抵抗ですよね。

 てかほら、もう巻かれてますけど、縄」


 俺とイリヤさんに抵抗する意思がないと判断したゴブリ、じゃなかったギョビュルリンは手馴れた感じで縄で俺たちを縛り上げてゆく。


「上玉の女ビュル!」

「アニキ達喜ぶぞきっとビュルー!」


 もしや、こんなモブキャラ同然のモンスターが、この世界では相当強敵なのか?

 イリヤさんは瞬殺とか言っているが、それが本当ならなぜさっさとやってしまわない?

 そしてなぜこれほどの強敵の存在を予想していながら単独で調査にやって来たのか。ちょっと無謀過ぎやしないか。


「ふふっ、これくらいじゃないと面白くないじゃないか」


「面白いとかそういう問題では……」


 だがこの時、俺は気づいてしまった。ギョビュルリンは器用にも縄でイリヤさんの胸を上下から挟み込むようにして縛ったので立派なものが強調されて非常にいい景色だということに。


「……やっぱり抵抗は止めましょう」


「おい、どこを見ている?」


「え?うなだれているんですけど?」


「いや、視線があからさま過ぎるぞ?

 もう一度訊くがどこを見ている?虚偽の申告をすると後で斬る」


「……胸です……すいましぇん。

 斬らないでください、まだ清楚系爆乳美少女との花火大会も行ってないので……」


「貴様、ほんとに異世界転移者なんだろうな?

 ただの変態説はまだ覆っていないぞ」


「ぐぬぬ……」


「ぐふふ、オデたちの根城に連れていって、たっぷり可愛がってやるビュル」

「もう家には二度と帰れないビュル」

 

 なんて最悪な異世界転移だ。全裸召還からいきなりこの大ピンチだ。しかも俺がこのままでは変態認定されてしまう。屈辱だ。俺はただ、ちょっとだけ意思が弱いだけの善良な市民なのに。


「ま、とりあえずこいつらに案内してもらおうじゃないか、根城まで」


「大丈夫なんでしょうね?

 後ろ手に縛られてますし、足首もこれかなりキツく結ばれてますよ?」


「お前は縛られるのが初めてか?」


「え?はぁ……まぁ」


 ん?何だこの質問。これじゃまるでイリヤさんが縛られ慣れてるみたいじゃないか!

 ま、まさかこの人……。


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