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Day.3-4 捜査報告

「じゃあ、私の方から報告させてもらおうかなぁ」


 俺の名前についてひとしきりいじり倒された後、時機を見てジュークが言った。


「イリヤと私が倒した屍体たちは、やっぱり魔導部隊所属の者達だったよ。

 全員が殺された後で暗黒魔導師の術で操られていたみたいだね」


「あぁ、ワシを守るために命を賭してくれた者達じゃ。

 可愛そうに、死してなお傀儡(くぐつ)に使われるとは。

 どうか手厚く葬ってやって欲しい。

 遺族がいる者には、ワシが補償金を支払おう」


「その事については追って、連絡させてもらうよ。

 それと魔導通信網に干渉していた装置についてだけど、回収して調べようとしたらその場で木端微塵に吹っ飛んじゃってね。

 どうやら特殊な魔術が施されていたみたいで、作成者以外の者が長時間触れていると自爆する仕組みだったみたい。

 だからどういう装置だったのは詳細は不明のままだよ。

 誰が作ったのかも、追えそうにないね」


 なるほど、巧妙に仕組まれていたわけだ。

 万が一装置が見つかっても、そこから足がつかないように。


「門を破壊した巨人の残骸も調べてみたけど、単なる土の塊だったね。

 恐らく事前に門の外側の地面に魔術をかけておいて、雨が降ったら勝手に固まって動き出すようにしていたんだろうけど。

 それにしちゃあ雨の降り出すタイミングがぴったりだったのは気がかりなところだね。

 天候を操る魔術もあるけど、あれだけ長時間・広範囲じゃ1人の術師だけでは骨が折れるよ。

 たぶん、占いだね。

 天候を予め占っておいて、にわか雨になる時刻を狙って攻めてきたんだと思うよ」


 そう、だから俺のアルコール・コーリングでも巨人の接近には気づけなかったわけだ。

 巨人はその場で出現したのだから。


「あとは暗黒魔導師リュケオンとやらについてだね。

 亡骸は消え去ったけど、最後にやろうとしていた魔術は痕跡が少しだけ残っていてね。

 どうやらどこか遠くへ肉体を転移させようとしていたようだよ。

 その場所がどこか追いかけようとしたら、向こう側から閉じられたね。

 魔族にはリュケオン以外にもまだまだ腕の立つ魔導師がいそうだよ」


 魔族については、詳細は不明のままか。

 わかっているのは人間に対し明確な敵意を持っていることと、非常に危険な術を行使すること。


「うむ、ジュークには魔導通信網の改良を依頼したい。

 今回のような妨害を受けにくくする方法を」


「それについちゃ少しは考えているよ。

 実現するためにはちょっと時間がかかっちゃうかもだけど。

 問題点は、魔導通信網を管理所で一元管理していたこと。

 通信網を複数の拠点で中継させて飛ばせば、どこかが妨害されても他で繋げることが出来るってわけ。

 新しい管理所を設置しないといけないけどね」


「よろしい、必要経費であれば申請してくれてよいぞ」


「わぁ、さっすが王様、太っ腹!」


「ほっほ、ワシの腹はそんなに出ておるかいな!?」


 そういやさっきからジューク、王様にタメ口だよな。

 あぁ、特別顧問なんだっけ。

 王様と立場は同じなわけか。

 この二人、気心知れてそうだし。


「私からも、捜査状況のご報告が」


 と、イリヤさん。


「おお、ネハンの方じゃな?」


「はい、先ほどネハンを捜査中の兵から聴取して参りました。

 いくつか報告すべき内容があります。

 まずは北門の警備兵について」


 昨日、北門の警備はなぜか手薄だった。その場にいた兵士は一人だけ。他の者の姿は無かった。


「結論から言いますと、警備兵の大半はあの時間、色町ネハンで遊んでいたようです」


「何じゃと!?

 大事な仕事を放棄して、か?」


「そうです。

 どうやらネハンの店側からの接待を受けていたようです」


「接待?」


「ええ、何でも、北門の警備兵達は店の常連だったらしく、器量の良い娘が入ったから是非店まで足を運ぶようにと働きかけがあったそうで」


「昨日、ちょうどあの時間にか?」


「そのようです。

 どうにも出来過ぎているような気がするので、この件については更に厳しく店を追及するよう兵には申し付けておきました」


「そうじゃな、それがよかろう」


「そして、妨害装置を設置した者の行方ですが、こちらは今以て不明です。

 ネハンというのは特殊な一角です。

 そこに暮らす者達は身分を偽ったり、経歴を隠したりしている者が多い。

 そして訪れる客もまた、正体を秘密にしている者が大半です。

 なので捜査が難航しています。

 ただ、これは偶然かもしれませんが……」


 一瞬、イリヤさんの視線がマスキュラさんに向いたのを俺は見逃さなかった。

 一方のマスキュラさんも、苦虫を噛み潰したかのような表情をしている。

 何か、苦しそうだ。


「北門の兵士を接待していた店と妨害装置があった店は、同じなのです。

 マリ、という女店主が切り盛りしている店でした」

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