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Day.3-2 座談会

 朝食が終わるタイミングを見計らったかのように、マスキュラさんが王様を伴って帰ってきた。


「ううーん、時には城下街を自分の足で歩いてみるのも悪くないわい」


「そうでしょうそうでしょう」


 和気藹々と雑談しながら二人は食堂へと入ってきた。


「お、お客さん起きたのか。

 おはようさん!」


「マスキュラさん、おはようございます。

 王様も、おはようございます」


「うむ、おはよう」


 マスキュラさんと王様は机を挟んで俺の向かい側に座った。

 素早くシトリが飲み物を用意する。

 

「マンドラジン・ドリンクです」


 透明なグラスにオレンジ色をした飲み物が注がれていた。

 マンドラジンを絞ったものか。

 野菜ジュース的なやつだな。


「おう、助かる」

「すまんの」


「お兄さんも飲みます?」


「あぁ、もらおうかな」


「はーい」


 そうして机の上に3つの飲み物が置かれた。

 シトリは調理場の片付けを済ませて俺の隣に座った。

 

「イリヤとジュークはまだ戻っておらんのか?」


「イリヤは城か、ネハンで仕事中でしょう。

 ジュークはもしかしたら魔導通信網管理所にいるかもしれませんね。

 二人とも昨晩の事件の残務処理に首を突っ込んでいるはずです。

 まぁこちらのお客さんが起きたら一度全員で顔を合わせて打ち合わせをすることは伝えてありますので、一度こちらへ戻ってくるとは思いますが」


 王様とマスキュラさんがそのような話をしている。

 そうか、リュケオンを撃破したからといって、一息つく間もないわけか。

 イリヤさんもジュークもいわば公僕、公務員だ。

 国の一大事とあれば休日返上で仕事に追われてしまう身なのだなぁ。

 俺にはわからない世界だ。


「ところで……」


 俺は手を上げておずおずと発言許可を願った。


「うむ、何じゃな?」


「俺についてはどこまで……」


 どこまで、俺のことは情報共有されているのだろう。

 俺が異世界転移者であること、俺のスキルのこと……誰がどこまで知っているのか。

 ここははっきりさせておかないと今後の対応に支障が出る。

 昨日はイリヤさん、王様に俺のことは伏せておくと言っていたし。


 マスキュラさんには、昨日のうちに俺からざっくり話してしまった。何としてもネハンまで運んでもらわないといけなかったからだ。

 俺が転移者であり、地獄耳の能力を持っていることを。

 ただし、アルコールを摂取しないと能力が使えないことは言っていない。そこを伏せる意味があるのかどうかは不明だが、少しくらい濁しておいた方がいいのかなと。


「お客人、そなたのことはこの後、イリヤから直接聞くことになっておる。

 何でも、昨日は大活躍だったそうじゃないか」


 あぁ、そういうことか。イリヤさん、現時点ではまだ何も言っていないのか。


「いえ、大活躍なんてほどじゃ」


 実際、俺は戦力としては何の役にも立たないわけだし。

 俺の能力は敵の居場所などの情報は正確に把握できるが、戦う段になれば誰かの手を借りなくてはならない。


「あのイリヤが評価していたほどじゃ、誇ってよいぞ。

 あれは滅多なことでは他人を誉めたりせん女じゃ」


「イリヤさんが……」


 それはまた、うれしい話だ。他人に厳しく自分にはもっと厳しい、そんなイメージを抱いていた。そのイリヤさんに評価してもらえたのなら、上々だ。


 玄関から引き戸が開く音がした。

 全員の視線がそちらへ向く。


「遅くなりました」


 イリヤさんとジュークが連れだってやってきた。


「イリヤよ、ワシらも今帰ってきたところじゃ」


「それでは、程よい時間でしたか」


 イリヤは一礼して素早く俺の隣に座った。

 ジュークはスキップのようなふわふわ足取りでマスキュラさんの横へ。


「傷の具合は問題ないかなぁ?」


「あぁ、俺の腹筋をナメちゃいけないね」


 マスキュラさんはニヤリと笑んだ。口元に覗く歯まで頑丈そうだ、この人は。


 これで、6人。

 フルメンバーか。


「何か収穫はあったのか?」


 マスキュラさんがイリヤに訊いた。


「あぁ、少しはな。

 だがその前に」


 イリヤさんの視線は俺の方へ。

 俺は頷いた。話すつもりだな。


「こちらの男について始めに、説明させてください」

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