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Day.2-15 妨害装置を破壊せよ!

「用がないなら帰りな!」


 マリさんが啖呵を切る。


「いや、用はあるっていうか……なぁ?」


 たじたじのマスキュラさん。


「マスキュラさん……2階……一番奥の部屋……」


 必死に、何とかそれだけ絞り出した。


「よし、わかった」


「部屋に誰か……います」


「任せとけ!

 そういうわけだから、マリ、ちょっとガサ入れさせてもらうぜ」


「おい、待ちな!」


 マリさんの制止を振り切ってマスキュラさんが店に飛び込んだ。


「……んの馬鹿!」


 マリさんは俺を店の中にまで引っ張り入れ、受付の横にあった椅子に雑に放り投げた。


 肩をいからせてマスキュラさんを追う。


「おら、待ちなド変態!」


 無視してマスキュラさんは手近な部屋(プレイルーム)の戸を開けた。


「うわっ!」

「きゃあっ!?」


 当然、悲鳴が上がる。


「っと間違えた!」


 そして隣の部屋を。


「おわっ!」

「誰っ!?」


 同様に悲鳴。


 さらに隣。


「むうっ!!?」

「ビュルー!!」


 っておい、2階の奥って言っただろ!


「ふぅ~役得役得ぅ!!」


 遊ぶな!この変態!!


 マスキュラさんは背後を振り返った。

 恐ろしい形相をしたマリさんが迫る。


「いっけね!こんなことしてる場合じゃなかった」


 いや、早く気づけよ……てかワザとだろ!?


 遊ぶのをやめ、マスキュラさんは2階への階段を駆け上がる。


 マリさんが深呼吸を一つ、した。

 何を!?


「きゃあああああぁぁ!!!

 変態ーーーーーーーッッッ!!!」


 腹の底から、これでもかという大声を吐き出した。

 もちろん、その声はあらゆる部屋に伝わり、驚いた女中たちが次々と顔を覗かせた。


 大事になってるよ……マスキュラさん。


 っと、この声を聞いて2階奥に陣取る“敵”に動きがあった。

 窓から、飛び降りたか。


 路地を高速で移動し始めた。

 

 逃がさん。


 俺のアルコール・コーリングがピッタリとその足音をマークする。

 

「うおっ、なんだこれ!?」


 マスキュラさんが部屋にたどり着いて声を上げた。

 その反響を基に、対象の物体のイメージを立体化する。


 三角錐の台座の上に、球体が浮かんでいる。球体は回転を続けているようだ。

 これが、魔導通信網を妨害している装置か。


 “敵”の足音は……止まったか。

 “敵”の周囲には人が多い。

 どの足音に注意すればいいか、わからない。

 せめて“敵”の顔を見てさえいれば……。

 

 チッ。

 舌打ちをする。

 

 まんまと取り逃がしたか。

 だが仕方がない。

 それよりもまずは……。


「おいおい……死んでるよ」


 妨害装置の傍に、血だまりの中にうつぶせに倒れている女が一人。

 衣類は乱れていない。

 顔は、うつぶせの為確認できない。


 俺が部屋にフォーカスしたのは体感で30分くらい前だ。

 そこからマスキュラさんに背負われてここへ一直線にやってきたわけだが、その間にもあの部屋の気配はずっと一つだった。

 心臓の鼓動まで聞き分けるアルコール・コーリングで聞き取れなかったのなら、その女は30分より前には既に殺されていたことになる。


「変態!!」


 階段を上がってきたマリさんがマスキュラさんのすぐ後ろに。


 頼む、マスキュラさん、破壊してくれ。

 そのオブジェが妨害装置なんだ。

 叫びたくても、もう喉が震えて声が出ない。

 クソッ、頼むよ。


「しゃあない、やるか」


 マスキュラさんは妨害装置の球体の方に、前蹴りをぶち込んだ。

 球体は壁にぶつかって跳ね返り、床を転がる。

 

 ブゥーン、という鈍い音がした。

 

 アルコール・コーリングだ。

 魔道通信網を再び捕捉。


 どうだ。

 どうなった?


 通信網は……正常へと戻っていた。

 通信障害は、きれいさっぱり消えて無くなった。


 作戦、成功だ!


 ならば、気合を入れなおさなくては。

 ホマスでイリヤさんに掛ける。


 状況を、伝えなくては。

 それまでの間はせめて、しっかり話せないと。


 酔いよ、鎮まってくれ。

 アルコール・コーリングのチャンネルを閉じる。

 フォーカスしていたもの全てを、一旦遠ざける。


「なんだ?通信網が回復したのか!?」


 繋がった!!


「イリヤさん、通信網を妨害していた装置は俺とマスキュラさんで壊しました。

 現在、北門以外の3か所の門が巨大な魔物によって破壊されています。

 ジュークとリュケオンはまだ決着がついていません!」


 一息に、言い切った。

 相当早口だったが、伝わったか?


「なんだと!?

 門が破られているだと!?

 四方から同時攻撃とは、魔族の連中め……」


「どうします?」


「通信が回復したのなら、手はある」


「まさかイリヤさんが全部倒すとか」


「それは無理だ。

 間に合わん。

 奴らを、使うしかない」


「奴らって?」


「お前以外の、異世界転移者だ」


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