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Day.2-12 俺だけの突破口

 北門、暗黒魔導師リュケオン。

 東門、西門、南門にそれぞれ巨人が一体ずつ。

 四方から敵の襲来を受け、王都ロメリアは危機に瀕していた。

 しかも通信障害でイリヤさんと連絡が取れない。


 ここまでが、リュケオンの筋書きか。

 北門へまず主戦力を誘導し、他の守りが手薄になったところを一気に叩くつもりだったのか。

 通信障害もリュケオンの仕業に違いない。

 連携を取れなくして、王都の混乱に乗じ一気に攻め潰す算段だろう。


 どうする?


 盛大な破壊音を轟かせて、東門が破壊された。

 巨人が遂に、侵入を果たす。

 警備兵は巨人の足に剣を叩き付けているが全く効果がない。


 巨人の姿を観察する。

 全体的に黄土色をした体躯。

 砂か泥みたいなざらついた皮膚の質感。

 皮膚のいたるところに謎の紋様が描かれている。

 あれだ、土偶みたいな感じだ。


 リュケオンが魔術で作り出した存在か。

 

 にしてもデカい。

 目測15メートルくらいあるんじゃないか?


 連絡係の兵士がホマスを片手に右往左往している。

 城へ電話しようとしているんだろう。

 繋がらないはずだ。

 俺たちはまんまと、敵の策にはまってしまったんだ。


 アルコール・コーリングは状況を全て把握できるものの、伝達手段が無ければどうしようもない。

 俺が自分で動いても、俺自身に戦闘能力があるわけでもないし、走ってもイリヤさん達に伝えるのは遅すぎる。


 現状を素早く確認する。


 北門、ジュークとリュケオンの一対一(タイマン)

 にらみ合いが続いている。

 ジュークはまだ、他の門が壊されたことは知らない。

 ここでリュケオンを倒せば終わりだと考えている。

 リュケオンとしては出来るだけ時間を稼いでジュークをここに釘付けにしておくつもりだろう。


 4体の屍達はそれぞれが別の路地へ駆け込み、分かれている。

 だが目指す場所はサンロメリア城だろう。

 イリヤさんが走りながら追うが、連中がどこに行ったのか見失っているようだ。


 土砂降りになっている。

 外を歩いている人の影はまばらだ。

 

 西門、南門では巨人の侵攻を食い止めようと兵士たちが頑張っているが効果が無い。

 この世界には銃火器類は存在しないのか。

 兵士が持っているのは皆、剣や槍だ。

 

 そしてここ東門。

 

「シトリ、屍体はどこに?」


「今は5体、宿の周辺を警戒させてますけど……いくらなんでもあのデカいのは倒せません」


「王様が宿にいることが敵にバレていないなら、あの巨人は宿を襲うことはないと思う。

 まっすぐ城へ向かうんじゃないかな」


「でもそれじゃあお城が」


「あぁ、それまでにあいつを絶対に倒さないと」


 巨人はゆっくりとした足取りで東通りを進んでいく。

 案の定宿の前を、素通りした。

 周辺の建物を破壊しないなら人的被害は少なく済むだろうが……。


 サンロメリア城には、動きがない。

 城の見張りはいないのだろうか。

 街の中心部にあるサンロメリア城からは4つの大通りが城門までまっすぐ見通せるはずだ。

 それにさっきの花火も、見えただろうに。


 大雨で見張りの兵士が建物内に引っ込んでいるのか。

 それかもっと悪い想像をするなら、城の内部にいる“敵”の策か。


 どうする?


 再度、自問自答する。


 今、この絶望的状況下で、俺に何が出来る。

 すべきことは何だ?


 考えろ。

 よく、考えろ。


 あるはずだ。

 何か、突破口は必ず。


 俺だけのスキル、アルコール・コーリング。

 全て、わかるんだ。

 この街で起きていることは全て。

 ただ、わかっても手を打つには時間が無さ過ぎる。

 俺が動くんじゃあダメなんだ。

 

 伝える手段が、必要なんだ。

 イリヤさんや、ジュークや、城の人達に。


 最優先ですべきことは。


 決まっている。


 魔導通信網を、取り戻す。

 どこで敵が妨害しているのか、その場所を割り出す。


「シトリ、マスキュラさんって足、速い?」


「えっ?うん、かなり速いですけど」


「動けるかな?」


「どうする、つもりなんですか?」


「魔導通信網が何者かに妨害されてる。

 その場所を、俺が特定する。

 一刻の猶予もない。

 マスキュラさんは怪我人だけど、走ってもらうことになると思う」


 それしかない。

 通信網さえ奪還すれば、反撃に移れる。


 さて、肝心の、場所の特定だ。


 魔導通信網は魔導石を用いた通信方法だが、それを妨害するとはどういうことか。

 

 たとえば俺のいた世界でも通信電波を妨害する装置は存在する。

 それをどこか手ごろな場所に置いておき、周囲一帯を通信不能にするわけだ。

 魔導石による通信を妨害する手段としてもこれが一番可能性が高いか、手軽だし。


 ならばきっと、ロメリアのどこかにその装置は置かれているはず。

 もしくは、妨害魔術みたいなものを使える術師がいて、そいつが妨害しているのかもしれない。


 いずれにせよ、魔導通信網を妨害しているものを、アルコール・コーリングで導き出す必要がある。

 対象が定まれば、そこへフォーカスしていくだけだ。


 方法は。

 ロメリアの空に無数に浮かぶ魔導石、あれが通信網の要だ。

 そちらへ聴覚を集中する。

 もし魔導ネットワークが魔導石を介する際に微弱でも音を発するのなら、その音の痕跡を遡ることで始点を特定できるだろう。


 どうだ。

 音は、鳴るのか。


 アルコール・コーリングだ。


 俺だけのスキルよ……頼むぞ!

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