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Day.2-11 四面楚歌

 リュケオンの周囲にいた屍達が動き出した。

 一直線にイリヤさんとジュークに向かって。


 速い!

 地を滑るような勢いでぶつかってくる。


「来るぞ!」

「わかってるよ!」


 2体を残して4体が左右に散開した。

 イリヤさん達の横をすり抜けてゆく。


 2体はそれぞれイリヤさんとジュークに激突した。


 イリヤさんは剣で、ジュークは魔障壁でそれを受け止める。


 屍の両腕の形状が変化している。

 剣のように鋭く尖っていた。

 しかも硬質化している。

 これも、魔術によるものか。


 高速で動く4体は一目散に王都の中心部へ。

 どこへ向かっているのか察しはつく。

 王の居城、サンロメリア城か。


 あの2体はイリヤさんとジュークをその場へ留める役割だ。


「イリヤさん!残りの連中はこちらでマークしています」


 俺はホマスに向かって叫んだ。


「あぁ、わ……た……を……すぐに……」


 応答するイリヤさんの声に激しいノイズが走る。

 通信障害だと?

 雨のせいか。

 いや……そんな脆弱なシステムなのだろうか魔導通信網って。


「イリヤさん、聞こえますか?」


「…………」


 何か喋っているんだろうが、まるで聞き取れない。

 バカな、このタイミングで連絡が途絶えるなんて。


 こちらはアルコール・コーリングのおかげでイリヤさんの声もジュークの声も把握している。

 が、しかし……。


「ジューク!通信障害だ。

 あいつとの会話が!途切れた!」


 イリヤさんは剣圧で敵を押し返しながらジュークに言う。


「うそー?ありえないね。

 魔導通信網に障害なんて。

 管理所の魔導師たちは一体何してるんだろ」


 ジュークの魔障壁に向かい何度も腕の剣を叩き付ける屍。

 しかしビクともしていない。


「管理所も襲われたか?」


「私に何一つ連絡も寄越せないうちに、管理所が制圧されたって?

 それはまず無いよ」


「だとしたら」


 敵の剣による横薙ぎを身を沈めてイリヤさんがかわす。

 そのまま敵の胸を刺突して貫いた。


「何者かによる妨害工作か」


 腕を思いきり振って貫いた敵の体を強引に引き裂き、吹っ飛ばした。

 やはりイリヤさんほどの実力者ならこれくらいの敵は容易い。


「うん、そうだと思うね」


 ジュークは腕を突き出し魔障壁を敵へ叩き付けた。

 屍はリュケオンの立つ場所よりも遥か後方まで吹っ飛んで地面に落下した。

 

「ジューク、私は残りの連中を追う。

 ここを任せても」


「いいよ。

 早く行って」


「すまない」


 イリヤさんが駆けだす。


 その時、俺の耳に地響きのような音が飛び込んできた。

 何だ?


 場所は、東門のすぐ外。

 

 ズゥン、という腹に響く音が鳴っている。

 俺はそちらに目をやった。

 ここなら目視で門を確認できる。


 その外に、巨大な生物が立っている。

 10メートルは超えようかと言う門よりも頭一つ抜けた巨体の、何だ……あいつは!?


 ドオォン!


 体当たりをしている。

 門が、ひしゃげた。

 警備兵達が、大慌てで動き出した。


 俺は意識を北門方向へ向けていて、東門の外の様子には注意を払っていなかった。

 だがあれだけの図体の奴が近づいているのなら、どこかの段階でその音を拾っていたと思う。

 どういうことだ。

 いきなりそこに、出現したのか?


 シトリが外へ飛び出してきた。

 そして、唖然としている。


「シトリ!」


「お兄さん、何なんですか、あれ!?」


「いや、俺が訊きたいよ!」


「た、大変……逃げないと」


「いや、待て」


 俺はシトリの傍に走っていって小声で会話をする。


「王様は、外に出さない方がいい。

 見つかるとまずい」


「それはそうですけど……」


「イリヤさんをここへ呼び戻すか」


 城へ向かっている連中は、城の兵士たちでも対処できるだろう。

 だがあの門の外にいる奴は、あまりにもデカすぎる。

 

 二度目の体当たりで門が内側に向かって、大きくゆがむ。

 次の攻撃で、もう破壊されてしまう!


 さっき、リュケオンは何と言った?

 北門だけなら、と言っていたな。


 あれは東門も同時に襲うという意味だったのか。

 そしてあの真っ黒い花火は、その合図だ。

 間違いない。


 だが待てよ。

 北門と、東門だけ?


 アルコール・コーリング。

 聴覚を、動かす。


 西門と、南門へ。


 そんな……これは!!


 西門が、粉々に破壊されている。

 南門も、同様だ。


 ここと同じ巨人が、西門と南門にも出現していた。


 恐ろしいことに、王都ロメリアは今、四方から敵の襲撃に遭っていたのだった。



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