表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/108

Day.2-2 街へGO!

 野菜の収穫と牛の乳搾りがシトリにとって早朝の日課らしい。

 結局あの後搾乳も手伝わされたわけだが、当然そんな作業初体験である俺は力加減がわからず、顔中を乳まみれにするファインプレーを繰り出してシトリに早朝からささやかな笑いを提供することとなった。


「今日はお手伝いありがとうございました」


 食堂にて。

 シトリが朝食を皿を並べてゆく。

 香ばしく焼いたバタートーストにサラダにミルク。

 実にモーニングらしいモーニングである。


「毎日あんな作業やってちゃ大変じゃないか?」


 洗顔したのにまだ顔がベタベタする。


「楽じゃないですけど、楽しいですよ」


「ほんと?そんなもんなのかねぇ」


 都会っ子な俺からすると、そんなに楽しいもんじゃあなかったけどなぁ。


「あ、そういえばイリヤさんは?」


「もう出掛けましたよ。

 お兄さんが起きる少し前に」


「早いなぁ……」


「イリヤさんは基本的にあまり寝ませんからね」


 そうなんだ……あの人の体力尋常じゃねぇな。

 昨日だって夜にあれだけ長時間トレーニングしてたのに。

 俺なんか今現在まさに腕が筋肉痛だよ。

 

「そういえば、この宿っていつもシトリが一人で切り盛りしてるの?」


 シトリ以外の従業員を昨日は見かけなかった。そして今日も今のところ、誰も出勤している気配はない。


「いえ、オーナーがいるんですけど、今は遠くへ出かけていて留守にしてますね。

 いつもは二人で営業してるんですよ」


「あ、そうなんだ。

 どんな人?そのオーナーって」


「マスキュラさんって言って、すごく筋骨隆々な人ですよ。

 ちなみに今はホログサーノ海に漁に出てます。

 なんでも、大物のログーマを狙うんだとか」


「あ、釣りに出かけてるんだ」


「ええ、素潜り漁ですね。

 一人で海に潜ってモリを使って魚を突き刺して仕留めるんですよ」


 それはまたワイルドだな。


「一週間くらいで戻ってくるって言ってましたから、今日か明日にでも戻ってくるんじゃないですかね」


「そのホロ……」


「ホログサーノ海ですか?」


「そうそれ、そこって遠いの?」


「スカイピアとの国境付近なんで」


「スカイピアか、王様が秘密会合してたとかいう」


「そうそう、その辺ですね。

 まぁ足の速い馬車なら1日あれば十分着きますね」


 ふぅーん。結構遠いな。


「ちょっと前までもっと従業員多かったんですよぉ!

 それがマスキュラさんが甘やかしてお金を貸したりするもんだから、宿の経営状態が悪化して、今は私一人になったんです!

 しかも愛人を囲ったり、ほんと酷い人です!」


 シトリがむすっとした顔で言う。

 なるほど、だらしない感じの人なのかな。1週間も仕事をほったらかしにして釣りに行くくらいだから相当な自由人なのだろう。


「シトリは宿でずっと働いてていいの?

 魔導師なんじゃなかったっけ?」


 本来の、屍体使い(ネクロマンサー)としての仕事はどうなっているのだろう。


「あぁ、私が出動するほどの大事件は最近起きてませんので大丈夫ですよ。

 何かあればジュークさんからすぐ連絡が入りますし」


「そうなのか。

 城の方に毎日顔を出さなくちゃならない、とかはないんだな」


「いや、ありますよ。

 だから毎日私の代わりに誰か行かせてます、屍体を」


 あぁ、そういうことか。屍体を遠隔操作出来るんだな。


「でも屍体って腐ってたりしないの?」


「腐りかけてますよ」


「でも城に入るんだよな?」


「はい、だから臭いますよ」


「文句言われない?」


「むしろ腐ってるから城の人達に私の使いだってわかりやすいんですよ」


 それは……そうなのだろうが。ううむ。


「さぁて、朝御飯食べましょう」


「あぁ、そうだったそうだった。

 早くしないと冷めちまうな」


「じゃ、手を合わせて」


「いただきます」


 朝食を手早く済ませる。


 この後、シトリからの仕事依頼がなければ街を散策に出掛けるつもりだ。目下しておきたいことは、悪酔いしない酒の発見である。出来れば飲みやすくて気分が悪くなりにくいやつを見つけておきたい。


「何か他に手伝うことは?」


 朝食が終わったタイミングでシトリに訊いてみた。


「そうですねぇ……私は買い物に行きますけど。

 わざわざついてきてもらうほどじゃないですね。

 あ!」


 シトリが俺を指差してジト目になった。


「一人でまた変なお店に行くつもりなんでしょ!?

 サイテーです!」


「いや、行かねえよ!」


 そんな連日行ってたまるか!っていうか昨日のトラウマが蘇るから蒸し返さないで!


「ううーん、信じられないなぁー」


「行かないったら行かない!

 監視をつけといてくれてもいいぜ」


「じゃあ20体くらい配置しときますね」


「多すぎだろ!?

 そこまで信用ないかな」


「あはっ、冗談ですよ。

 好きに行動してください。

 でもお兄さんは国にとっては重要人物みたいなんで、あんまり目立つ行動はしない方がいいですよぉ」


「あぁ、わかってるよ」


 俺のスキルについては、知られれば知られるほど使いにくくなる。だから俺も身近な人間以外には隠し通すつもりだ。


「でも、シトリが買い物に出てる間はこの宿はどうするんだ?

 従業員いなくなるじゃん」


「鍵閉めちゃいますね。

 そこまで頑張って営業しなくてもいいってマスキュラさんも言ってますし」


「あ、そうなんだ」


 案外マスキュラさんは裕福なのかも。不労所得とか得てたりするのかな?


「私は片付けが終わったら出掛けちゃいますけど、お兄さんどうします?」


「じゃ、一緒に俺も出るとするかな。

 少し教えてほしいんだけど、お酒がたくさん置いてあるお店知らない?」


 酒屋か酒蔵なんかが見つかれば、俺に合った酒を発見できるかもしれない。


「朝っぱらから飲む気ですか!?」


「違うよ!

 あー、飲むっちゃ飲むけど、能力を使うのに適したやつを探したいんだよ」


「あぁ、お酒飲まないといけないんでしたね。

 じゃ、ちょっと待ってくださいね」


 シトリは俺のホマスに位置情報をインプットしてくれた。少し店までは距離がありそうだ。のんびり付近を歩きながら、街の雰囲気を楽しむとするか。


 そうして俺とシトリは一緒に宿を出、すぐ先の路地で別れた。


 日はすっかり登っていて、今日はよく晴れている。

 さて、今日は1日かけてじっくりと、王都ロメリアを探索しよう!


  

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ